昨晩の日フィル定期は予想通りの快演でした。
 プログラムも秀逸。
   幕開けに演奏されたのは、スウェーデンの作曲家ステンハンマル(1871-1927)の序曲『エクセルシオール!』。天のいと高き所へ! を意味するタイトルにふさわしく、印象的な上昇モチーフがさまざまな楽器に何度も何度も現れる、聴きやすく感動的な曲でした。空の高いところを目指して昇っていく、そのメッセージは最初、バスクラリネットに短調で現れますが、最後は晴れやかな長調に転じて、聴く者に明るい明日を予感させてくれました。
 鈴木優人さんのきめ細やか、かつ体を惜しみなく使い、決め所をびしっと指示なさる指揮ぶりもみごとで、それについていく楽員も渾身の力演でした。あまりにも板についた指揮でしたので、あとで優人さんに、この曲は何度かなさっているの?と伺いましたら、「とんでもない。初めてですよ。一生懸命勉強しました。いい曲でしょう」とのこと。
DSC_3732

 シベリウスのヴァイオリン協奏曲の辻彩奈さんは、10日前のサン=サーンスの明るくライトな音色から打って変わって、凍てつく北国の灰色の空を思わせる重厚な音色と、唖然とするほど完璧なテクニックで、このヘビー級のコンチェルトを満堂に響かせました。
 肩も背中もあらわになる黒のドレスの腰には、大きなラインストーンをたくさん埋め込んだ飾りベルト。それがとてもよく曲に映えていました。
DSC_3735
ピツィカートだけで奏される、民謡風の愛らしいとても短い小品をアンコールにお弾きになったのでお尋ねすると、
「シベリウスの『水滴』です」
 後半はシベリウスの交響曲第6番。教会旋法で書かれた、不思議な透明感のある交響曲です。その独特の色合いを優人さんはよく奏出していらっしゃいました。
「この曲はステンハンマルに献呈されているんですよ。それで最初にステンハンマルを組み合わせました」と優人さん。
 爽やかなお二人が、日フィル定期に揃ってご登場。嬉しい一夜でした。
                                              2021年5月29日記