昨晩は、高いハードルを乗り越えて、シェフを務める日本のオーケストラのために来日を果たしたジョナサン・ノットさんが「ただいま! 」のごあいさつでスタンディング・オペーションを勝ち取られたお話を書きました。けれども、どなたもそうそうたやすくは日本においでにはなれる状況にはなっていなくて、自主待期期間にスケジュールがかみ合わず、来日を断念されている演奏家も多々、おられます。
 今夜は、サントリーホールに日本フィル定期を聴きにうかがいますけれど、この演奏会は当初、日フィル・シェフのピエタリ・インキネンさんが振られる予定でした。しかし、どうしても調整がつかずに、涙を呑んで来日を見送られました。このことは、インキネンさんもご無念で下でしょうし、日フィルにとっても痛恨事だったと存じます。
 となると、代役が必要です。急遽、これをお引き受けになられたのは、チェンパリスと、オルガニスト、指揮者として、現在あらゆるシーンでご活躍中の超売れっ子、鈴木優人さんです。
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 優人さんのご活躍ぶりはコロナ禍以前からですが、特に今の状況になってからは指揮の代演も非常に多く、それがまた悉く目覚しい成果をあげられるので、オファーが相次いでおられるようです。
 日フィルのご挨拶がこちら。  
 第730回東京定期演奏会の指揮者として出演を予定しておりましたピエタリ・インキネン[首席指揮者]は、新型コロナウイルス感染症に係る入国制限措置の都合上、来日ができなくなりました。

  インキネン来日中止について

代わりまして、鈴木優人(指揮)、ソリストには辻彩奈(ヴァイオリン)が出演いたします。急な代役をお引き受けいただいたお二人に心より御礼申し上げます。
出演者変更に伴い、曲目も以下に変更させていただきます。
鈴木優人は自身のバックボーンであるバロック音楽はもちろんのこと、古典・ロマンそして現代までの音楽を手中に収めた気鋭のマエストロです。
今回は日本フィルとの共演ということで、鈴木氏自身の希望から伝統のシベリウス〜ヴァイオリン協奏曲と交響曲第6番に取り組むこととなりました。
ソリストの辻彩奈はモントリオール国際音楽コンクールをこの曲で制覇した実力派。
かつて渡邉曉雄やベルグルントといったシベリウスのスペシャリストと日本フィルが共演してきたこの作品を、今回若い二人の音楽家とともに心を込めて演奏いたします。

《変更後プログラム》

第730回東京定期演奏会
5月28日(金)19:00、29日(土)14:00
指揮:鈴木優人
ヴァイオリン: 辻彩奈
ステンハンマル:序曲《エクセルシオール!》
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
シベリウス:交響曲第6番 ニ短調 op.104 

より一層万全の感染症対策を行い、皆様に安心してお楽しみいただけるように、そしてこのような状況下だからこそ音楽の力を我々自身もより一層信じ、お客様のご来場を心よりお待ちしております。

 シベリウスのヴァイオリン協奏曲のソリストは、この方も今、人気、実力とも最高峰入りされた、辻彩奈さん。つい10日前、18日の都響演奏会のようすは本ブログの同日欄にも書きましたけれど、あの日はサン=サーンスの3番でした。
 わずか10日後に、まったくテンペララメントの異なるシベリウスとは!
   でもきっと、何の苦も無く、はじめからシベリウスを弾くために生まれたいらしたかのように、入魂の自然体で聴かせてくださることでしょう。
 今っとも旬なお二人の顔合わせ、楽しみに拝聴してまいります。

 ただ、ちょっと、気になりますのは、この演奏会は今日明日の2公演あるのですが、どちらも客席を50パーセントとしなければならず、そのためにきっと買いたいお客様もおことわりされたであろうのに引き換え、昨晩の東京交響楽団特別演奏会は多摩川をわたったところにあるミューザ川崎シンフォニーホールだったおかげで、その制限がかからず、相当数のお客様がひしめいておられたことです。
 うまく来日できた外国人演奏家もいらっしゃれば、断念なさった方もおられ、その空隙を埋めて大躍進なさる邦人演奏家もおられます。かと思えば、先日オンライン記者会見がありましたばかりの、反田恭平さんのように、株式会社組織のオーケストラを立ち上げられたピアニストまでおられて、音楽界事情は様々ですが、どなたも今何ができるのか真剣に模索し、トンネルを抜けたときに爽やかな明日を迎えられるよう、それぞれのなさり方でご自分を磨いておられるように感じます。
                                          2021年5月28日記