本日、東京芸術劇場で開催されました東京都交響楽団の第927回定期演奏会Cシリーズを拝聴いたしました。井上道義マエストロによるオール・フランス・プログラムは下記です。
サティ:バレエ音楽《パラード》
サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 (ソロ::辻彩奈)
サン=サーンス:交響曲第3番《オルガン付き》
結論から申し上げますと、井上道義マエストロの気力、意欲がこの数年来でも稀にみるほど充実していらして、都響がそれに敏感に反応した、近年屈指の名演でした。
詳しい公演評は『音楽の友』7月号に書かせていただきますので、ここでは、公式レビューに書ききれないことながら、のちのちのためにも記しておくべき話題を一つだけ記させていただきます。
フランス近代の作曲家、エリック・サティがどれくらい風変わりな人物であったかは、随所で語られていますが、この《パラード》の編成楽器からも、それがよく窺えます。
「フラックソノール」なる楽器がそれで、これはなんと、洗面器に張った水の水面を、打楽器奏者が両手で上から渾身の力をこめて叩く、その水音を楽音とする楽器のことです。
洗面器の水を、このようにな小さな赤ちゃんではなく、大の大人が真上から両手で体重をかけて叩けば、ものすごくリアルな「バシャーン」という音がしますけれども、夥しい水しぶきが四方八方に飛び散り、叩いたお方はぬれねずみとなります。
それを意に介すことなく、ステージ上でその行為をやれ、と要求したのがサティの《パラード》でした。
ステージ下手に、透明ビニールの小屋がしつらえられ、中に、透明な洗面器が台上に置かれていたので、まさか、と思ったのですが、これがそのフラックソノールでした。臆することなく、ただ一方の開いた面から半身を乗り出されて、洗面器の水を両手で叩かれたパーカッション奏者様を心より讃えたく存じます。スーツもワイシャツもネクタイもお顔も髪もずぶぬれになられました。この同じ奏者様は、その状態を目立たぬようにタオルで少々拭われただけで、他に、サイレン、タイプライター、ルーレットまで担当されたのですから、まことに見上げたプロ根性でございました。聞けば、都響がこれを採り上げたのは若杉先生時代以来、30数年ぶりとか。
辻彩奈さんソロによる、サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番、石丸由佳さんをオルガン奏者とする同じ作曲家の交響曲第3番、いずれも稀に見る爽快な演奏でした。
辻さんのソリスト・アンコールは、権代敦彦さんに辻さんが委嘱した彼女の専売特許の名作《ポスト・フェストム》の第2曲、本日はことに佳演でした。
2021年5月18日記
サティ:バレエ音楽《パラード》
サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 (ソロ::辻彩奈)
サン=サーンス:交響曲第3番《オルガン付き》
結論から申し上げますと、井上道義マエストロの気力、意欲がこの数年来でも稀にみるほど充実していらして、都響がそれに敏感に反応した、近年屈指の名演でした。
詳しい公演評は『音楽の友』7月号に書かせていただきますので、ここでは、公式レビューに書ききれないことながら、のちのちのためにも記しておくべき話題を一つだけ記させていただきます。
フランス近代の作曲家、エリック・サティがどれくらい風変わりな人物であったかは、随所で語られていますが、この《パラード》の編成楽器からも、それがよく窺えます。
「フラックソノール」なる楽器がそれで、これはなんと、洗面器に張った水の水面を、打楽器奏者が両手で上から渾身の力をこめて叩く、その水音を楽音とする楽器のことです。

洗面器の水を、このようにな小さな赤ちゃんではなく、大の大人が真上から両手で体重をかけて叩けば、ものすごくリアルな「バシャーン」という音がしますけれども、夥しい水しぶきが四方八方に飛び散り、叩いたお方はぬれねずみとなります。
それを意に介すことなく、ステージ上でその行為をやれ、と要求したのがサティの《パラード》でした。
ステージ下手に、透明ビニールの小屋がしつらえられ、中に、透明な洗面器が台上に置かれていたので、まさか、と思ったのですが、これがそのフラックソノールでした。臆することなく、ただ一方の開いた面から半身を乗り出されて、洗面器の水を両手で叩かれたパーカッション奏者様を心より讃えたく存じます。スーツもワイシャツもネクタイもお顔も髪もずぶぬれになられました。この同じ奏者様は、その状態を目立たぬようにタオルで少々拭われただけで、他に、サイレン、タイプライター、ルーレットまで担当されたのですから、まことに見上げたプロ根性でございました。聞けば、都響がこれを採り上げたのは若杉先生時代以来、30数年ぶりとか。
辻彩奈さんソロによる、サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番、石丸由佳さんをオルガン奏者とする同じ作曲家の交響曲第3番、いずれも稀に見る爽快な演奏でした。
辻さんのソリスト・アンコールは、権代敦彦さんに辻さんが委嘱した彼女の専売特許の名作《ポスト・フェストム》の第2曲、本日はことに佳演でした。
2021年5月18日記
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