昨年の今頃はほぼすべてのクラシック音楽公演がばったり止まってしまいましたが、本日現在、緊急事態宣言延長の規制内容が音楽公演全般に全面自粛を求めるものではなかったおかげで、都内施設では客席数の50パーセント以下に抑えた上で、感染防止諸対策を徹底すれば、コンサートもオペラも開催できるようになりました。緊急事態宣言ではなく、蔓延防止重点措置下の近県では50パーセント以下、の要請も特にないようです。

 というわけで、昨日514日の晩は東京都墨田区錦糸町のすみだトリフォニーホールで新日本フィルハーモニー交響楽団「ルビーシリーズ」♯39を拝聴し、本日午後は神奈川県川崎市のミューザ川崎シンフォニーホールで同ホールとここに本拠を置く東京交響楽団が共同主催する「名曲全集」第167回を拝聴してまいりました。

  新日フィルのほうは50パーセント以下要請に加え、本日夕刻も同じ内容の公演があり、つまり2公演あるせいもあって、入りは全体の50パーセントのそのまた50パーセントといったところでしょうか。それでも、崔文殊コンマスの弾き振りに、各楽器のソリストをオーケストラの内外から選りすぐって、バッハ『ブランデンブルク協奏曲』全6曲という意欲的なプログラムが披露されました。この協奏曲集は11曲すべて編成が異なり、どの曲も独奏楽器群と合奏群から成り立っているわけですが、独奏群に新日フィルのメンバーが多く起用されていたことは、モチベーション・アップに絶大な効果を上げていたと思います。

外部から招かれた、チェンバロの西山まりえさん、トランペットの髙橋敦さんの名演も圧巻でした。外国人指揮者を招きにくい今こそ、このような試みによって演奏力も演奏意欲も高めていただきたいものです。

 本日午後のミューザ「名曲全集」の方は、1公演だけですし、人数制限もないせいか、かなりの大入り。大植英次マエストロの指揮で次の3曲が演奏されました。

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◎武満徹:鳥は星形の庭に降りる

◎バルトーク:ピアノ協奏曲第1 Sz.83

◎ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 op.73

 

 バルトークのソリストは、故濱田滋郎先生から「卓抜な詩的感性、そして哲学的叡智を具えた芸術家」と評された北村朋幹さん。この至言を実証する名演で聴衆を圧倒なさいました。

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 武満作品は、星形の庭に鳥たちが舞い降りる夢が作曲動機で、星形というところから、「5」という数字がモチーフとなっています。5音音階、5種の音列…。鳥の主題を担当なさったオーボエ、お見事でした。手掛かりがわかると聴きやすい作品です。

 後半のブラームス2番。非常に深く、かつ広がりのある音が引き出されていたので、雄大なスイスアルプスを観ているかのような、寛いだ気持ちで聴かせていただくことができました。大植マエストロ、一段と表現のスケールを増しておられました。

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