昨晩、4月23日以来20日ぶりにサントリホールに出掛け、困難を乗り越えて来日を果たしたアンドレア・バッティストーニの指揮する「東京フィルハーモニー交響楽団第952回サントリー定期シリーズ」を聴かせていただいてまいりました。
曲目は、ピアソラのオーケストラ大作『シンフォニック・ブエノスアイレス』op.15、プロコフィエフのバレエ音楽『ロメオとジュリエット』組曲より の2作です。 アストル・ピアソラは1921年3月11日生まれですので、今年生誕100年を迎え、その記念ということで、マエストロ・バッティが採り上げたとのことです。ご存知のように、ピアソラはバンドネオン奏者、また、自身のバンドネオンを含むピアソラ五重奏団のリーダーとして活躍し、作曲家としてはバンドネオン入りの小編成楽団用作品を多く書きました。そんな彼ですが、この『シンフォニック・ブエノスアイレス』op.15は堂々たる大編成オーケストラ作品で、編成には多種多様なパーカッション、グロッケンシュピール、ピアノ、チェレスタ、そして、バンドネオンが2台も入っています。非常に明瞭なリズム・モティーフが全編に貫かれた、いかにもピアソラらしい、ノリのよい作品でした。第2楽章(中間部)はこれまたピアソラのもう一つの一面、物憂さの中に濃厚なロマンティシズムの漂う音楽で、第3楽章の終盤に、2台のバンドネオンの見事なカデンツァが組み込まれていました。二人の奏者のあまりの妙技に驚きましたら、このお二人は、日本が世界に誇るこの楽器の名手、小松亮太さんと、北村聡さんでした。
はじけるように躍動的で明晰な指揮により、これを日本初演してくださった、マエストロ・バッティに心より感謝いたします。プロコフィエフの『ロメオとジュリエット組曲』抜粋にも、バッティならではの表現、例えば、総じてきびきびとしたテンポではあっても乾きを感じさせない弦の歌わせ方や、悲しみの中にどこか救いがあり決して絶望的ではない音色が印象的でした。オーケストラのメンバーの、マエストロ・バッティとの共演の喜びもひしひしと伝わってきて、爽快な気分で帰途に就かせていただきました。
2021年5月14日記
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