一昨日、1月12日、サントリーホールで開催された樫本大進さんとキリル・ゲルシュタインさんのデュオ・リサイタルを拝聴してまいりました。 前半は、まず幕開けのプロコフィエフ『5つのメロディー』Op. 35bisで、大進さんの愛器、1674年製の『アンドレア・グァルネリ』の密度の高い美音にうっとりしたあと、フランクのヴァイオリン・ソナタで緊密に練り上げられた二重奏を堪能し、そして、後半は武満徹『妖精の距離』のえもいわれぬ浮遊感に酔い、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番『クロイツェル』の丁々発止に、手に汗を握りました。ヴァイオリン・ソナタの2大傑作がどちらもイ長調というのも、この楽器に最適の調が、ニ長調、もしくはイ長調のゆえでしょうが、それにしても2曲ともこの調の有利さをあますところなく使い切って、表現力の限りが尽くされていることをあらためて強く認識いたしました。
大進さんは、過去に他のピアニストで何度も聴かせていただいていますが、ゲルシュタインさんとのデュオは初めて拝聴しました。同い年のお二人は、もう長いお友達だそうです。ゲルシュタインさんは緻密にきっちりとアナリーゼして、水も漏らさぬデュォをつくりあげようとするタイプのピアニスト。大進さんは幅広い適応力のあるヴァイオリニストですから、こうしたピアニストと組まれれば、もちろん、ご一緒に一つの方向性を目指されますので、アンサンブルにブレはありません。ただ、次は、より自由度の高いパートナーとのデュオを拝聴したいように思いました。
ところで、お二人のアンコール曲がかなり珍しいものでした。
ルドルフ・フリムルという1879年チェコのプラハ生まれ、アメリカで活躍なさった作曲家の『ベルスーズ(子守歌)』という曲です。子守歌ですから当然ながら、非常に穏やかな、昔懐かしい気分に誘われる、やさしい曲調です。このような曲は音のよさが命。大進さんにふさわしいアンコール・ピースでした。
このフリムルさん、お若い時は、ヤン・クーベリックの伴奏者を務められた方で、渡米後は、オペレッタ、ミュージカル、映画音楽の作曲家として成功されました。1925年にオペレッタ『放浪の王者』を作曲なさっていて、その中の『放浪者の歌』の旋律に日本の堀内敬三が歌詞を付けたものが、1929年(昭和4年)の松竹映画『親父とその子』の主題かとしてヒットし、それが1982年の深作欣二監督作品『蒲田行進曲』にカバーされて、再ヒットした、という、日本との縁浅からぬお方なのでした。
もう一つ驚いたことに、この方が亡くなられたのは1972年11月12日。あと3週間で93歳のお誕生日を迎えるところでしたから、たいへん長命な作曲家、しかも、亡くなる直前まで現役でいらしたという、うらやましい人生。
ご覧のような端正な美男子に生まれついたおかげか、生涯に4人の妻を得て、最後の妻は34 歳年下。この奥様ご自身も2007年に94歳の天寿をまっとうされたということですから、このコロナ禍の真っただ中に、わたくしたちは非常におめでたい曲を聴かせていただいたことになります。
コロナ・ウイルスなどに負けることなく、みなさま、ぜひ、フリムルご夫妻にあやかりましょう。
本夕は、またサントリーホールに伺い、セバスティアン・ヴァイグレ指揮、読売日本交響楽団第638回名曲シリーズを聴いてまいります。前半は、藤田真央君のラフマニノフ、ピアノ協奏曲第3番、後半はチャイコフスキーの4番。そうそう、大進さんのコンサートで真央君に遭いましたら、とても元気で、つい先日、群馬交響楽団とサン=サーンスの2番を協演した話をしてくれました。快心の出来だったそうで、「すべてぴたりと合って、あんなにうまくいくことはまずないくらい、気持ちよく弾けちゃったの」とおっしゃいます。「マエストロは?」とおききしたら「高関先生」。道理で!!
2021年1月14日記
大進さんは、過去に他のピアニストで何度も聴かせていただいていますが、ゲルシュタインさんとのデュオは初めて拝聴しました。同い年のお二人は、もう長いお友達だそうです。ゲルシュタインさんは緻密にきっちりとアナリーゼして、水も漏らさぬデュォをつくりあげようとするタイプのピアニスト。大進さんは幅広い適応力のあるヴァイオリニストですから、こうしたピアニストと組まれれば、もちろん、ご一緒に一つの方向性を目指されますので、アンサンブルにブレはありません。ただ、次は、より自由度の高いパートナーとのデュオを拝聴したいように思いました。
ところで、お二人のアンコール曲がかなり珍しいものでした。
ルドルフ・フリムルという1879年チェコのプラハ生まれ、アメリカで活躍なさった作曲家の『ベルスーズ(子守歌)』という曲です。子守歌ですから当然ながら、非常に穏やかな、昔懐かしい気分に誘われる、やさしい曲調です。このような曲は音のよさが命。大進さんにふさわしいアンコール・ピースでした。
このフリムルさん、お若い時は、ヤン・クーベリックの伴奏者を務められた方で、渡米後は、オペレッタ、ミュージカル、映画音楽の作曲家として成功されました。1925年にオペレッタ『放浪の王者』を作曲なさっていて、その中の『放浪者の歌』の旋律に日本の堀内敬三が歌詞を付けたものが、1929年(昭和4年)の松竹映画『親父とその子』の主題かとしてヒットし、それが1982年の深作欣二監督作品『蒲田行進曲』にカバーされて、再ヒットした、という、日本との縁浅からぬお方なのでした。
もう一つ驚いたことに、この方が亡くなられたのは1972年11月12日。あと3週間で93歳のお誕生日を迎えるところでしたから、たいへん長命な作曲家、しかも、亡くなる直前まで現役でいらしたという、うらやましい人生。

コロナ・ウイルスなどに負けることなく、みなさま、ぜひ、フリムルご夫妻にあやかりましょう。
本夕は、またサントリーホールに伺い、セバスティアン・ヴァイグレ指揮、読売日本交響楽団第638回名曲シリーズを聴いてまいります。前半は、藤田真央君のラフマニノフ、ピアノ協奏曲第3番、後半はチャイコフスキーの4番。そうそう、大進さんのコンサートで真央君に遭いましたら、とても元気で、つい先日、群馬交響楽団とサン=サーンスの2番を協演した話をしてくれました。快心の出来だったそうで、「すべてぴたりと合って、あんなにうまくいくことはまずないくらい、気持ちよく弾けちゃったの」とおっしゃいます。「マエストロは?」とおききしたら「高関先生」。道理で!!
2021年1月14日記

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