時々、出演させていただいているNHKの『ラジオ深夜便』から、モーツァルトの話題でお話をしませんか、というお誘いをいただき、昨日、NHKの401スタジオへ収録に行ってまいりました。
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お相手をしてくださったのは、名アンカーの遠藤ふき子さん。これまでにも、幸田延、諏訪根自子、クララ・シューマンといった偉大な先人たちの話題で出演させていただいた時に、つたない話の聞き役を務めてくださった聞き巧者ですから、リラックスしておしゃべりさせていただくことができました。 
 お尋ねくださったことは、女性音楽家の評伝を手掛けてきたわたくしが、今回、どのようないきさつから、男の子である『モーツァルト』の伝記を書いたのか、モーツァルトの時代のザルツブルクとはどのような街だったのか、なぜ、モーツァルトは少年時代からあれほど旅に明け暮れたのか、そして旅は、彼に何をもたらしたのか、お父さんに反抗したことはなかったのか、ウィーン時代の前半は非常に好調だったのに、後半なぜ、急激に生活が逼迫したのか、遺体が行方不明となったのはどうしてか、などなどで、お答えしながら、自分の中でも一つ一つ、考えが整理されていく気がして、あらためて遠藤さんのインタビュアとしての力量に敬服する思いでした。
 最後に、どうしてモーツァルトは、あれほど人の心を打つ音楽を書く事ができたと思うか、とのご質問をいただきました。まさに、核心を突いたご質問です。
 わたくしなりに考えたことはこうです。
 それは、モーツァルトに人並外れた鋭敏な感受性があったからであることはもちろんですが、彼はその感受性の表現を、常に、惜しみなく、本気でしていたからではなかったか、ということです。彼は自分の書く音楽によって聴き手を喜ばせ楽しませ、あるいは悲しみを共有してもらうこと、聴き手の共感を得ることをみずからの最大の喜びとしていたからだと思うのです。
 晩年には、彼の表現志向が孤高の高みに向かいすぎて、音楽に娯楽を求める一般大衆の理解の範囲を超えてしまいましたが、それら晩年作は、真摯に聴こうとする者の琴線にふれずにはいません。ともあれ、天与の才と、各地を旅して身に着けた最高の音楽書法の裏付けのある、感性の鋭い男が全身全霊を傾けて書いたがゆえに、彼の音楽はわたくしたちの心を捉えて離さないのではないでしょうか。
 そんなお話をさせていただいてまいりました。
 放送日は、2021年1月27日の23:00代です。
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 そう、お気づきのように、この日はモーツァルトの265歳のお誕生日です。そして来年は、モーツァルト没後230年の記念年でもあります。QRコードで彼の音楽の聴ける拙著『音楽家の伝記・はじめに読む一冊 モーツァルト』(ヤマハミュージックメディア・1,600円+税)がこの天才作曲家への旅のお供となりますように……。
                                             2020年12月25日記