前回、第九4公演の模様をお伝えした記事で、日フィル、飯森範親マエストロ組の合唱団全員がマスク装着であったことを、驚きをもってご報告いたしましたが、昨夜、1222日のやはりサントホールを会場とする日フィルのもう一つの第九、小林研一郎マエストロ組を拝聴しに伺ったところ、ああ、ついに、マエストロと4人のソリストまで、マスク装着のままの演奏を聴かせていただくことになりました。

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                    テノールの錦織健さんとバリトンの青戸知さん

 マスクをつけたコバケン・マエストロはもちろん暗譜。第3楽章から第4楽章をほぼアタッカでお続けになるお方ですので、47名の東京音楽大学合唱団は最初からp席に板つき、全員、マスク装着です。ソリスト4名は、第3楽章の前に入場されましたが、何と、ステージではなく、p席中央ブロックの前から2列目に間隔をあけて坐られました。ずいぶん遠い感じです。これまでの4公演ではステージ後方に並ばれて、それでも客席からかなりの距離感がありましたが、p席となるともうオペラ・グラスものです。しかし、遠目にもmaskを付けておられることだけはわかります。さりながら、いくら何でも、ソロが始まったらはずされるのだろうと思っていました。ところが、器楽部分が終わり、いよいよ、バリトンの青戸知さんが立ち上がられたとき、マスクを外すご様子がないのに、いやな予感をつのらせていますと、あろうことか、そのまま、「O Freunde, nicht diese Töne!……」が始まったのです。

 もちろん、たいへんご立派に歌われたのですが、マスク無し、とは違わない、とは言えるはずもありません。青戸さんがお気の毒でならず、涙がこぼれそうになるほどのショックでした。

 下のほうの深いところからお声を絞りだされようとするので、どうしても下向き気味になられますし、お声を張り上げれば張り上げるほどマスクから声圧が跳ね返ってくるので、マスクが下にずり下がり、それを何度も左手で引きあげていらっしゃる動作にも、ご同情を禁じ得ませんでした。しかし、そう言ったことどもをすべて包括した上で、感動的な第一声でした。本当にお偉い、みあげたプロ精神だと思いました。

 そのあとも、テノールの錦織健さん、ソプラノの市原愛さん(写真左)、アルトの山下牧子さん、47名の合唱、全員、マスクのまま歌われました。

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 どなたにとっても苛酷な試練だったことでしょう。オーケストラはdistanceをとった12型。マスク装着は各自の判断に任されていました。最後にコハケン・マエストロが、「通常の3分の1の合唱で、何とか上演しました。ありがとうございました。今後も是非ご支援を」とご挨拶。十八番中の十八番だけに、手のうちに入った演奏でしたけれど、やはりなさり辛かったようです。このイレギュラー第九が、来年には笑い話になっていますようにと、祈らずにはいられませんでした。

                                          20201223日記