6月7日にスタートしたサントリーホール チェンバーミュージックガーデン2025が、本日、22日、盛況のうちに閉幕しました。最終日は「CMGフィナーレ2025」と銘打った総集編のような長尺公演で、これまでの出演者たちの大半が入れ代わり立ち代わりステージに登場し、それぞれ、フィナーレにふさわしいプログラムを繰り広げました。
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■出演者
ヴァイオリン:原田幸一郎/池田菊衛/渡辺玲子
ヴィオラ:磯村和英
チェロ:堤剛/毛利伯郎
ハープ:吉野直子/マリー⹀ピエール・ラングラメ
弦楽四重奏:シューマン・クァルテット
ピアノ三重奏:ヘーデンボルク・トリオ/葵トリオ
サントリーホール室内楽アカデミー選抜フェロー

■曲目
シューマン:弦楽四重奏曲第1番 イ短調 作品41-1 より 第1楽章
バルトーク:ピアノ五重奏曲 ハ長調 より 第1楽章
ワーグナー(ヴィルヘルミ、クライスラー 編曲):楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』より 第3幕 ヴァルターの歌「朝はバラ色に輝いて」
クライスラー:『ウィーン風小行進曲』
クライスラー:シンコペーション
アイルランド民謡(クライスラー 編曲):ロンドンデリーの歌
シューベルト:弦楽五重奏曲 ハ長調 D. 956 より 第2楽章
芥川也寸志:弦楽のための三楽章(トリプティーク)
アルベニス(キャンバーン 編曲):組曲『スペインの歌』作品232 より 第4曲「コルドバ」
ラヴェル(ソーニエール 編曲):組曲『鏡』より 第4曲「道化師の朝の歌」
細川俊夫:『レテ(忘却)の水』
シュルホフ:弦楽四重奏のための5つの小品 より
第1曲「ウィンナ・ワルツ風に」、第2曲「セレナーデ風に」
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番 ニ長調 作品11 より 第2楽章
シュルホフ:弦楽四重奏のための5つの小品 より 第3曲「チェコ風に」、第4曲「タンゴ・ミロンガ風に」、 第5曲「タランテラ風に」

 なかでも圧巻だったのは、元東京クァルテットの原田幸一郎/池田菊衛/磯村和英の3氏に、チェロの堤剛氏、毛利伯郎氏が加わったシューベルトの弦楽五重奏曲でした。弦楽四重奏にチェロをもう1本加えることによって、チェロが低音支えの仕事のみならず、独自に、存分に歌えることになったその成果が大きく美しく、花開いていました。ヴァイオリンのお二方とヴィオラもまったく力むことなく、ごく自然な弓遣いで芯の透った深い音を紡がれ、見事に調和のとれたアンサンブルを実現されました。  
 ヘーデンボルク・トリオは、クライスラーの生誕150年に因み、クライスラー編曲の、ワーグナー『マイスタージンガー』の゜ワルター「朝はバラ色に輝いて」、アイルランド民謡『ロンドンデリーの歌』、クライスラー・オリジナルの『ウィーン風小行進曲』『シンコペーション』の4曲を演奏なさいました。記念年に、どうしてもクライスラーを演奏なさりたかったそうですが、トリオの楽譜はなかなか入手できず、手を尽くされたとのこと。苦労の末に手に入れてくださったおかげで、チェロ入りのめずらしい版を楽しませていただくことができました。
 最後を飾ったシューマン・クァルテットのシュルホフ、チャイコフスキーも聴きものでした。彼らのベートーヴェンとは異なるお顔が見えたことを嬉しく思いました。  
                                 2025年6月22日記