佐藤采香さんは香川県高松市出身。8歳でユーフォニアムを始め、高松第一高等学校音楽科を経て、東京芸術大学音楽学部器楽科卒業。同大学大学院音楽研究科修士課程、スイス・ベルン芸術大学スペシャライズドソリスト修士課程修了。2014年韓国・チェジュ国際金管打楽器コンクールユーフォニアム部門第2位、15年日本管打楽器コンクール ユーフォニアム部門1位、16年米国・ITECコンペティション2位。18年フィンランド・リエクサ国際コンクールユーフォニアム部門優勝という輝かしい経歴を持つユーフォニアム奏者です。
ユーフォニアムは幾重かに巻かれた円錐管と、通常4つのバルブ(弁)を持つ低音管楽器の一種で、B♭管がスタンダードです。
昔のオーケストラの低音管楽器は、セルパン、オフィクレイドなどでしたが、19世紀の半ばに新楽器が開発され、それがさらに改良が進んだ結果、低音域のほうがチューバに、それより音域の高い方がユーフォニアムになったと考えてよさそうです。
主にウィンド・オーケストラで活躍していますが、通常のオーケストラ楽曲でも、例えばホルストの組曲『惑星』の第1曲「火星」、リヒャルト・シュトラウスの交響詩『ドン・キホーテ』のようにユーフォニアム入りの作品もあります。
佐藤さんは、そのユーフォニアムのソロ楽器としての可能性を探るとともに、他楽器とのアンサンブルの幅を広げ、そのための新作委嘱によるレパートリーの拡大を目的として、「ユーフォニアムの地平線」全5回シリーズを始められたそうです。
第1回はハープ、ピアノとの協演だったそうですが、そのコンサートは存じ上げず、拝聴できませんでした。でも昨晩は、その第2回を箏奏者の森梓紗さんをゲストとして開催されることを知り、たいへん興味深く聴かせていただきました。
■プログラム
D.ガブリエリ:リチェルカーレ 第一番、第六番 無伴奏チェロのための
冷水乃栄流/ 委嘱新曲『名残の花』
吉沢検校:千鳥の曲
山根明季子/ 委嘱新曲
中村匡寿/ ハルモニアとカドモス
J.S.バッハ:インベンション14番 変ロ長調
山根明季子/ 委嘱新曲
瀧廉太郎 arr. 向井航/ 荒城の月
1曲目のガブリエリはソロ。佐藤さんの音色は円く、和みがあり、カンテラの光のようなものを感じさせました。
森さんを迎えた、冷水乃栄流/(ひやみずのえる)さんの 委嘱新曲は、散ることができずに枝のガクに残ってしまった桜の哀感をこの2つの楽器の音色と表現技巧に託したもので、作曲者の卓越したセンスを、奏者お二人が良く受け止めた名演でした。
冷水乃栄流(ひやみずのえる)さん、1997年のお生まれとのこと。得難い才能です。
『千鳥の曲』、森さんの箏の手もお上手ですが、お歌が最高でした。ユーフォニアム・パートは初代中尾都山がヴァイオリンのために編作した音譜の、長谷川将山さんの校訂版によるそうで、たいへん手間暇のかかる地道な試みです。初代中尾都山大先生はこのようにお仕事までされておられたことに驚きました。
ただ、筝とのユニゾンが多いのはもったいないので、今度またお筝と「千鳥」を演奏されるのであれば、別ヴァージョンも可能ではないかと思いました。
後半では、中村匡寿さん、山根明季子さん、向井航さんの、それぞれオリジナリティに富んだ才気あふれる創作力に敬服しました。
2025年5月10日記
ユーフォニアムは幾重かに巻かれた円錐管と、通常4つのバルブ(弁)を持つ低音管楽器の一種で、B♭管がスタンダードです。
昔のオーケストラの低音管楽器は、セルパン、オフィクレイドなどでしたが、19世紀の半ばに新楽器が開発され、それがさらに改良が進んだ結果、低音域のほうがチューバに、それより音域の高い方がユーフォニアムになったと考えてよさそうです。
主にウィンド・オーケストラで活躍していますが、通常のオーケストラ楽曲でも、例えばホルストの組曲『惑星』の第1曲「火星」、リヒャルト・シュトラウスの交響詩『ドン・キホーテ』のようにユーフォニアム入りの作品もあります。
佐藤さんは、そのユーフォニアムのソロ楽器としての可能性を探るとともに、他楽器とのアンサンブルの幅を広げ、そのための新作委嘱によるレパートリーの拡大を目的として、「ユーフォニアムの地平線」全5回シリーズを始められたそうです。
第1回はハープ、ピアノとの協演だったそうですが、そのコンサートは存じ上げず、拝聴できませんでした。でも昨晩は、その第2回を箏奏者の森梓紗さんをゲストとして開催されることを知り、たいへん興味深く聴かせていただきました。
■プログラム
D.ガブリエリ:リチェルカーレ 第一番、第六番 無伴奏チェロのための
冷水乃栄流/ 委嘱新曲『名残の花』
吉沢検校:千鳥の曲
山根明季子/ 委嘱新曲
中村匡寿/ ハルモニアとカドモス
J.S.バッハ:インベンション14番 変ロ長調
山根明季子/ 委嘱新曲
瀧廉太郎 arr. 向井航/ 荒城の月
1曲目のガブリエリはソロ。佐藤さんの音色は円く、和みがあり、カンテラの光のようなものを感じさせました。
森さんを迎えた、冷水乃栄流/(ひやみずのえる)さんの 委嘱新曲は、散ることができずに枝のガクに残ってしまった桜の哀感をこの2つの楽器の音色と表現技巧に託したもので、作曲者の卓越したセンスを、奏者お二人が良く受け止めた名演でした。
冷水乃栄流(ひやみずのえる)さん、1997年のお生まれとのこと。得難い才能です。
『千鳥の曲』、森さんの箏の手もお上手ですが、お歌が最高でした。ユーフォニアム・パートは初代中尾都山がヴァイオリンのために編作した音譜の、長谷川将山さんの校訂版によるそうで、たいへん手間暇のかかる地道な試みです。初代中尾都山大先生はこのようにお仕事までされておられたことに驚きました。
ただ、筝とのユニゾンが多いのはもったいないので、今度またお筝と「千鳥」を演奏されるのであれば、別ヴァージョンも可能ではないかと思いました。
後半では、中村匡寿さん、山根明季子さん、向井航さんの、それぞれオリジナリティに富んだ才気あふれる創作力に敬服しました。
2025年5月10日記
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