4月22日、14:00より、王子の北とぴあ14階カメリアホールで、第37回ミュージックペンクラブ賞授賞式が開催されました。ミュージックペンクラブ・ジャパンは、「クラシック」「ポピュラー」「オーディオ」の三分野の音楽関係の言論・執筆活動に携わっている評論家、ミュージック・ライター、音楽学者、作曲家、演奏家、文芸評論家などで構成された団体です。
 1966年に、会員の原稿料権益を守る目的から「音楽執筆者協議会」として発足し、時代の変化に伴い、開かれた文化団体へと脱皮していく活動の一環として、会発足後20年を経た1987年に、それぞれの部門に功のあった個人、団体を顕彰する目的から、「音楽執筆者協議会賞」が制定されました。
 わたくしが入会した20世紀末頃には、会の名称もミュージックペンクラブ・ジャパンに替わり、賞も現名称になっていました。
 僭越ながら、数年前からこの賞のクラシック部門の選考委員を拝命いたしましたので、2024年も、クラシック音楽界を懸命に見渡し、いくつかの部門ごとに賞の対象者をあげて審査に携わりました。そして、会員全員の投票を経て次の審査結果に至り、その授賞式が昨日行われたというわけでした。
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■第37回看―ジックペンクラブ賞

 
《 クラシック 》
1. ソロ・アーティスト部門 庄司紗矢香(ヴァイオリン)
2. 室内楽・合唱部門 サントリーホール チェンバーミュージックガーデン
3. オペラ・オーケストラ部門 東京・春・音楽祭
4. 現代音楽部門 東京都交響楽団 ジョン・アダムズ自作自演(第992・993回定期演奏会)
5. 研究評論・出版部門 白石美雪著『音楽評論の一五〇年 福地桜痴から吉田秀和まで』 (音楽之友社)
6. 功労賞 小澤征爾(指揮)
7. 特別賞 井上道義(指揮)
《 ポピュラー 》
1. 最優秀作品賞 渡辺貞夫 『ピース』 (ビクターエンタテインメント)
2. イベント企画賞 第11回「3. 11 全音楽界による音楽会 チャリティコンサート」
3. 新人賞 中村滉己 (津軽三味線奏者、民謡歌手)
4. 著作出版物賞 永井良和著「ジャズとダンスのニッポン」 (関西大学出版部)
5. 功労賞 谷川俊太郎
6. インターナショナル部門 ビヨンセ 『カウボーイ・カーター』 (ソニーミュージック) クインシー・ジョーンズ
《 オーディオ 》
1. 技術開発部門 マランツ MODEL10(プリメインアンプ)
2. 録音作品部門 坂本龍一/Opus(Blu-ray)
3. 功労賞 サエクコマース株式会社創立50周年 

 日頃、クラシック分野にしか目が向かずにおりますが、このような機会に、ポピュラー、オーディオ部門の皆様のご活動、ご活躍を知ることができ目が開けました。

 クラシック部門では、功労賞を、昨年逝去された小澤征爾氏に差し上げたのですが、代理で受け取られた、所属事務所の平佐社長が「たいへん、名誉でありがたいことです」とおっしゃりながらも、「せっかくなら、ご存命のうちにさしあげてほしかった」とご挨拶され、続く特別賞の井上道義氏も「まったく同感。僕はまだ生きているけれども、もう引退を表明しています。そのような人間にはもういいから、若くてこれからの人にあげてほしい」とおっしゃられたことが、ずしりと胸に響きました。
 ポピュラー部門、功労賞の谷川俊太郎氏ご遺族、ご長男の作曲家・ピアニストの賢作氏の「父は“賞”と名のつくものを好まない人でした。受け取ってよいか迷いましたが、父は言葉に対して疑いを持ち続けつつも、音楽は言葉よりも上にあるものと考えていましたので、"音楽賞"ということで頂戴することにいたしました。父は面映ゆがることでしょうが、喜んでくれることと思います。しかし、生きて活動しておいでの方に差し上げた方がいいのでは」という意味のごあいさつも印象的でした。考えさせられます。

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 それに呼応するように、ポピュラー部門の新人賞は、何と、弱冠21歳の中村滉己 (津軽三味線奏者、民謡歌手)さんに授与され、中村さんは受賞に応えて、大変感動的な、アカペラの青森県民謡と、津軽三味線の『秋田荷方節」『津軽じょんがら節』をライヴ演奏してくださいました。
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 中村さんが昨年、日本コロムビアからリリースされたアルバム』「民唄-たみうた」のライナーノートを書いたわたくしとしては、たいへん嬉しい授賞式でした。
                              2025年4月23日記