昨3月13日の晩、オペラシティコンサートホールで、群馬交響楽団東京定期演奏会を拝聴いたしました。指揮は常任指揮者の飯森範親さん。群響のソロ・コンサートマスターは伊藤文乃さんです。
 前半はワーグナー/楽劇《トリスタンとイゾルデ》から「前奏曲」「愛の死」。『前奏曲』ではオーケストラの抑えた弦から暗鬱な雰囲気が立ち込めます。
 すると、その悲劇的空気感をそっと払しょくするかのように、下手からそっと一歩ずつ、淡いゴールドオレンジ系の張りのある生地のドレスをぴたりと着こなした小林沙羅さんが第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンの間を縫って、ステージ中央へと静かに歩んでこられました。半分アップにまとめ、半分は後ろにウェーブさせて垂らした髪型もお似合いで神々しいまでの気品が漂います。とてもおきれいで、コーンウォールの王女そのものの姿に、それだけで感動してしまいました。
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 この方は、リリック・ソプラノでいらっしゃると思っていたので、『愛の死』は意外でした。
 渾身で歌われ、天を仰ぐようにしてオーケストラに突き抜けようとなさる姿に手に汗を握ってしまいましたが、こうやってレパートリーを広げていかれるのだなと、お勉強ぶりに頭も下がります。
 後半メインはマーラーの交響曲第9番。この曲では何と申しましても、14型通常配置の上手にずらりと並んだ、8本のコントラバスがとてつもない威力を発揮したのが印象的でした。コンサートマスター、ヴィオラ首席、ホルン首席他のソロも、ソロとして目立つのではなくオーケストラに溶け込む名演でした。
 弱音から最弱音への、静かな幕切れもおみごと。飯森マエストロは振り終えて両手を胸元で静止され、しばしそのまま、時間が流れます。
 聴衆は固唾を飲んで待ち、マエストロの両手が降りて、「ブラボー!」。そして拍手が始まりました。                                       
                              2025年3月14日記