11月4日に、山根一仁さんのJ.S.バッハ、無伴奏ソナタとパルティータ全曲リサイタルをお聴きしたことは本ブログに書かせていただきましたが、このコンサートに先だって、キングレコードから同作品集の2枚組CDアルバムが発売されていました。
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 生のリサイタルをお聴きしたあと、あらためて録音を拝聴して、あの日、山根さんが発信された彼の現在のバッハへの傾注が理解できました。
 彼がこのアルプスの高い峰々のような作品群にいかに真摯に対峙したか、その結果、自分のバッハはこうありたい、あるべきと、強い信念をもって発信された演奏の完成度がどれほど高いかが、よくわかりました。
 リサイタル当日の方が、さらに自由度が増していましたが、ともあれ、この録音に聴く山根さんのバッハは、全ての音に彼の解釈が瑞々しく息づくもので、それが高い技術に支えられて非常に受け入れやすく、聴き手の心に響く演奏です。
 装飾音の入れ方一つをみても、これはよほど時代と作品を知って隅々まで咀嚼し、先人のさまざまな演奏解釈への研究考察を重ねなければできないことだと思いました。  
 録音は2024年5月、中新田バッハホール。
 プロデューサーにおききしましたら、ここでリサイタルを開かれた山根さんが非常に響きを気に入られて、録音会場に選ばれたということです。
 バッハホールで録音された、『山根一仁:J.S.バッハ、無伴奏ソナタとパルティータ全曲』。
 山根さんは1995年生まれ。20代でこの作品群を録音したヴァイオリニストは、世界的にもそんなに多くはないとは存じますが、若い息吹に満ちて、弾き盛りの高速テクニックも良い方向へ作用しています。脱力の会得の成果でしょうか。機会がありましたら、お聴きになられてみてください。
                                2024年11月8日記