連休中日の本日、原宿のライヴ空間「アコ・スタジオ」で、歌手・女優・舞踊家・作曲家・台本作家・演出家をおひとりで体現される稀有なるパフォーマー、モンデンモモさんの、オリジナル音楽舞踊劇第三作「夢候よ(ゆめ、そうろうよ)」を拝見いたしました。
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 モンデンさんは、東京藝術大学音楽学部声楽科出身のクラシックの歌唱技術と理論を身に着けた声楽家でもありますが、音楽とダンス、演劇、全ての要素を組み合わせた舞台作品の卓越したパフォーマーとして長らく活動され、近年は、ご自身のテキストにご自身が作曲された声楽作品を歌われながら、高次のダンス・パフォーマンスを繰り広げるオリジナル舞踊音楽劇を発表してこられました。
 昨年は、与謝野鉄幹をめぐる、与謝野晶子、山川登美子のすさまじい人間模様と、そこから生まれた晶子の一連の人権主張の反映された文学作品をテーマとする『みだれ髪』を拝見して、モンデンさんの桁外れのパフォーマンスに衝撃を受けました。
 今年は、昭和3年金沢生まれ,昭和60年にみずから命を絶った洋画家、鴨井玲をとりあげ、彼の生き方と芸術を心から理解して寄り添った女性、富山栄美子の眼を通して鴨井を描いた野心作『夢候よ』が3公演上演されました。その最終公演を拝見しまして、今回もまた、モンデンさんの総合芸術力に舌を巻きました。
 1時間強のステージで、モンデンさんはほぼ歌いっぱなし、それも激しい身体表現付きです。
 彼女を支える舞踊家、安藤雅孝さんの、ダンスの相手としてのリフト等の助演所作はもちろん、小道具や衣装の扱いなどの後見、舞台監督から黒子まで兼ねた、細心の動きが実に素晴らしく、モンデンさんが彼に全幅の信頼を寄せて、安心して激しい演技をなさっておられることがよくわかりました。  
 音楽は、ピアノの砂原dolceさんとヴァイオリンの、よしひさ秋さん。
 たったおふたりの演奏チームなのに、幅広い表現力をもってモンデンさんの音楽希求を見事にサポートされました。
 人形製作とヘアメイクの野田充孝さんのお仕事も素晴らしく、この方がたのチームワークにより、洋画家・鴨井玲の光と影が浮き彫りになりました。
 描く対象に、心からなる共感を寄せていなければ決して制作、上演できない、一期一会の音楽舞台劇です。
 モンデンさんの感情移入豊かな歌唱としなやかな身体表現に、ただただ、耳と目と心を奪われておりました。
 鴨井玲を愛し抜いた女性、
富山栄美子の視点からこの繊細な芸術家の生と死が描き出されたことにより、懊悩しつつも真摯に生きた鴨井玲が、気になってたまらない存在となりました。
                                   2024年11月3日記