昨9月27日の晩、東京オペラシティコンサートホールで、バッハ・コレギウム・ジャパンによる、J.S.バッハ ミサ曲ロ短調の、全曲演奏会を拝聴いたしました。バッハの宗教声楽曲として、『マタイ』『ヨハネ』の両受難曲と並ぶ大作ですが、2つの受難曲が劇的なテキストに作曲されているのに対して、ロ短調ミサ曲は、ラテン語のミサ定型文をテキストとしています。考えてみますと、ラテン語ミサはカトリック教会の典礼なので、ルター派プロテスタントのバッハが、これを書いたとは、いったいどうして? と思いそうですが、ルター派教会の礼拝でもラテン語ミサを用いることが認められていました。
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 でもバッハは、キリエ、グローリア、ニケーア信経、サンクトス、オザンナ、ベネディクトス、アニュス・デイ、ドナ・ノビス・パ―チェムという、現在の演奏順に一括して作曲していったわけではなく、1724年にサンクトゥスを、1733年にキリエとグロリアを…‥‥という具合に、一部ずつ書いて、その都度、礼拝で演奏したようなので、生前にこれが全曲通して初演されることはなかったわけです。
 現在こうして、一挙に聴くことができるのは、バッハ自身さえ体験できなかった贅沢な鑑賞機会です。とてもありがたいことだと思いました。
 昨晩の指揮は鈴木雅明さん。声楽ソリストは、松井亜希さん、マリアンネ・ベアーテ・キーラントさん、アレクサンダー・チャンスさん、櫻田亮さん、加耒 徹さんとお馴染みの名手たち。ただ、コンサートマスターが、若松夏美さんではなく、山口幸恵さんでした。第2ヴァイオリンのトップは髙田あずみさんです。
 チェンバロは大塚直哉さん、オルガンは鈴木優人さん。演奏は、受難のドラマの深刻さがないせいもあって、とても清新な感じがいたしました。
                             2024年9月28日記