首席指揮者(Chief Conductor Designate)サー・アントニオ・パッパーノに率いられたロンドン交響楽団が来日中です。9月24日の福岡シンフォニーホール、25日の大阪ザ・シンフォニーホール、26日、27日の東京サントリーホール、29日の札幌コンサートホール、の5公演、3種プログラムのうち、昨晩のサントリーホール公演を拝聴いたしました。
 この、カーテンコールの写真は、招聘元の社長様のご許可をいただいて撮りました。「うちがいいって言っているんだし、彼らもオーケーなんだから、どうぞ、どうぞ」とのお言葉でした。
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■プログラム
  ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」op.9
  ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1番 ヘ短調 op.1
  サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 op.78 「オルガン付き」

 1曲目のベルリオーズの序曲は、実に柔らかな音で始まりました。謝肉祭の陽気な気分、喧騒、お祭り騒ぎがテーマとはいえ、パッパーノとLSOは和やかな表現、温かみにみちた上品な音で、謝肉祭を描き出しました。終盤にさしかかると、『幻想交響曲』のフィナーレを思わせる賑やかさに到達しますが、それでも完全におおはしゃきするのではなく、どこかに気品を残したところがLSOらしいと存じました。
 2曲目のラフマニノフのソリストは、ユジャ・ワン。
 ほとんど、水着、またはマラソン・ランナー・ルックかと見まごう、超ミニの煌びやかなお衣裳です。上はあざやかなライトグリーン。裾の方は赤です。キラキラなことは言うまでもございません。
 登場されただけで、館内がどよめきます。
 そしてあの、やっちゃっ子のような、ひょっこりとした素早い御辞儀。
 即座に弾き出す序奏フレーズは目にも止まらぬスピード。確信に満ちたテクニカルな打鍵。
 本編では、剛柔自在の表現力を開花させました。
 アンコールに、グルックの『オルフェオとエウリディーチェ』から『メロディ』のズガンバーティ編を情緒豊かに弾き、そのまま絶品のピアニッシモで、糸車の回る音型が静かにそっと開始されました。『糸をつむぐグレートヒェン』のリスト版です。この2曲をつなげて弾くアイディアと、繋げ方のうまさにため息がでました。
 後半のサン=サーンスには、イギリスから帯同したオルガニスト、リチャード・ゴ―ワーズが出演。パッパーノさんはこのフランス交響曲の最高名曲を、やはり、ベルリオーズのときと同様、充分にオーケストラを鳴らしながら、絶叫はせず、ノーブルにまとめ上げました。1959年、イタリア人の両親の元、英国サセックス生まれ。アメリカで音楽教育を受けてからヨーロッパで活躍されておられ、今や、英国の代表的指揮者のお一人となられました。
 第2楽章第2部後半の、シンバルが感動的です。背の高いパーカッショニストの方が、一打ごとに、音量はもちろん、ニュアンスまで変えて、打ち鳴らされたそのあざやかさ。
 すっかり、ファンになってしまいました。
 そしてアンコールは、センス良く、フランスで統一して、フォーレのノスタルジックな『パヴァーヌ』。
 LSOで聴くフランス・プログラムの極上の味わいに大満足いたしました。
                                2024年9月27日記