本日5月26日、久しぶりに川畠成道さんのコンサートを拝聴いたしました。川畠さんが毎年この時期に開かれている「グランドファミリーコンサート」というシリーズで、2002年スタート、今回で23回目になられるそうです。
 ピアノは、桐朋時代からのご友人、佐藤勝重さん。佐藤さんとも、細々とですが、もう長いお付き合いがございます。
 全開ですが、まったくかぶせることなく、ダイナミクスもテンポも間合いも柔軟なピアノはさすがでした。
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 モーツァルトのト長調ソナタ、クライスラーの『シンコペーション』『愛の悲しみ』『愛の喜び』『前奏曲とアレグロ』が前半に、映画音楽と、ヴィルトゥオーゾ・ピースが後半に演奏されました。
 曲間にお話をなさいながら進められるスタイルですが、そのお話が、決してよどみなくしゃべられるわけではなく、時々、間が空いたかと思うと、次の瞬間、鋭く事の本質を突いた一言が繰り出されるという、いかにも川端さんらしいものでしたので、実に面白く聴かせていただきました。
 例えば、演奏曲目の中に、タレガのギター曲「アルハンブラの思い出」のルジェーロ・リッチ編曲ヴァイオリン独奏版がありました。その曲を紹介なさるときに、「僕は演奏家として仕事をしていますが、時折、教えて欲しいと頼まれることがあってお引き受けしたときに、教えきれないことがあります。これから演奏する「アルハンブラの思い出」などもそうで、6本弦のギターの曲を4本弦のヴァイオリンに移し、指で弾くのを弓にかえて演奏するわけですから、これはもう、はっきり言えば、できるかできないか、しかありません」といわれ、少し間をおいて、「こうやるんだよ、と言ってあげることはできますが、それ以上は教えられません」 ややあって、「その人次第なんです」と。「冷たいようですが、本人の問題なんです」と。

 たいへん含蓄に富むお言葉のあとに聴かせていただいた、リッチ編曲『アルハンブラの思い出』のお見事なこと!!
   ギターのトレモロを、ヴァイオリンのハイポジションで弓先をこまかく震わせる奏法に移してあり、そしてもちろん、その細かな音型の中に、あのノスタルジックな旋律と、もう一つの声部がありありと浮かび上がったのです。
 これはもう、教えられるもの、教わって会得するものでないことが、はっきりとわかりました。
 もう1曲,アンコール2曲目のディニークの『ひばり』でも、同じことをおっしゃられ、この時は「本人のセンスの問題なんです」と言われました。
 至言名言だと感じ入りました。
 川畠さんの、息を飲む『ひばり』、是非、お聴きくださいませ。
ひばり(ディニーク/寺嶋 陸也 編) (youtube.com)

 
                             2024年5月26日記