昨日5月16日、19:00開演の新国立劇場『椿姫』初日を拝見いたしました。3幕オペラですが、この頃はたいてい、第2幕の1場と2場との間に大きな休憩1回、というタイムスケジュールで進みます。それでも終演はほぼ22:00になりました。ヴァンサン・ブサール演出のこの『椿姫』は2015年の新制作初演以来、今回が5回目で、これまでの4回も拝見していますのに、忘れていることも多く、ああ、ここはこうだった、そういえば、こんな演出だったと、あれこれ思い出しました。
冒頭は、アルファベットで何事かが書かれているのが大きく映し出されて始まります。それは、墓碑に刻まれた次の銘文です。
Marie Duplessis ここに眠る
1824年1月15日~1847年2月3日
かわいそうに、デュマ・フィスの原作小説のモデルとなったこの女性、マリー・デュプレシが、23歳という花の盛りに天に召されたことに、あらためて思いを馳せますと、すでにもうハンカチが必要でございます。
1824年生まれですから、ちょうど今年で生誕200年。
没年の1847年はメンデルスゾーン姉弟の亡くなった年でもあります。ファニーが41歳で、フェリックスが38歳で亡くなられたことですら、なんと若死にであったかと胸が痛くなりますが、マリー・デュプレシからみれば、まだ長命といえましょう。
ノルマンディーの貧家に生まれた彼女は、パリへ出て、洗濯女や帽子の縫子などとして働いているところを裕福な商人に見初められて愛人となり、16歳のときにはパリでも屈指の高級娼婦となっていました。
デュマ・フィスはもちろんのこと、フランツ・リストとも交際歴があり、リストにピアノをみてもらったことも伝えられていて、優雅にピアノを弾き、豊富な読書歴を通じて貴族男性と対等に会話のできる教養も身に着けていたようです。若くして裏社交界の女王に昇り詰めるまでには、人知れぬ努力があったに違いありません。
23歳で逝った、マリー・デュプレシのご冥福を、生誕200年の今年、あらためてお祈り申し上げます。
さて、昨晩の『椿姫』のヒロイン、ヴィオレッタは、2022年に続いて、中村恵里さんが演じられました。2022年の時は、急な代役でしたが、今回はその成功により、初めから中村さんに白羽の矢が立ったのです。
わたくしは中村さんが初めてこの役を歌われた、6~7年前の宮崎国際音楽祭での演奏会形式『椿姫』を拝見して、初役とは信じ難い入魂の役作り、歌唱力に圧倒されました。その後、2022年の新国立劇場、そして今回と、3回目に聴かせていただいたわけですが、やはり、ここまでチャレンジングにお歌いになれるソプラノは少ないと感じました。
新国立劇場では、日本物以外のオペラのタイトルロールに、日本人歌手を起用することは滅多になく、『椿姫』も中村さんが歴代初の、日本人タイトルロールです。
本当にご立派でした。
2024年5月17日記
冒頭は、アルファベットで何事かが書かれているのが大きく映し出されて始まります。それは、墓碑に刻まれた次の銘文です。
Marie Duplessis ここに眠る
1824年1月15日~1847年2月3日

かわいそうに、デュマ・フィスの原作小説のモデルとなったこの女性、マリー・デュプレシが、23歳という花の盛りに天に召されたことに、あらためて思いを馳せますと、すでにもうハンカチが必要でございます。
1824年生まれですから、ちょうど今年で生誕200年。
没年の1847年はメンデルスゾーン姉弟の亡くなった年でもあります。ファニーが41歳で、フェリックスが38歳で亡くなられたことですら、なんと若死にであったかと胸が痛くなりますが、マリー・デュプレシからみれば、まだ長命といえましょう。
ノルマンディーの貧家に生まれた彼女は、パリへ出て、洗濯女や帽子の縫子などとして働いているところを裕福な商人に見初められて愛人となり、16歳のときにはパリでも屈指の高級娼婦となっていました。
デュマ・フィスはもちろんのこと、フランツ・リストとも交際歴があり、リストにピアノをみてもらったことも伝えられていて、優雅にピアノを弾き、豊富な読書歴を通じて貴族男性と対等に会話のできる教養も身に着けていたようです。若くして裏社交界の女王に昇り詰めるまでには、人知れぬ努力があったに違いありません。
23歳で逝った、マリー・デュプレシのご冥福を、生誕200年の今年、あらためてお祈り申し上げます。
さて、昨晩の『椿姫』のヒロイン、ヴィオレッタは、2022年に続いて、中村恵里さんが演じられました。2022年の時は、急な代役でしたが、今回はその成功により、初めから中村さんに白羽の矢が立ったのです。
わたくしは中村さんが初めてこの役を歌われた、6~7年前の宮崎国際音楽祭での演奏会形式『椿姫』を拝見して、初役とは信じ難い入魂の役作り、歌唱力に圧倒されました。その後、2022年の新国立劇場、そして今回と、3回目に聴かせていただいたわけですが、やはり、ここまでチャレンジングにお歌いになれるソプラノは少ないと感じました。
新国立劇場では、日本物以外のオペラのタイトルロールに、日本人歌手を起用することは滅多になく、『椿姫』も中村さんが歴代初の、日本人タイトルロールです。
本当にご立派でした。
2024年5月17日記
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