本日午後、サントリーホールで開催された東京交響楽団第720回定期演奏会は、音楽監督ジョナサン・ノットの指揮による、前半に、武満徹『鳥は星形の庭に降りる』、ベルク:演奏会用アリア『ぶどう酒』、後半にマーラー『大地の歌』というプログラムでした。ベルクの珍しいアリアは、高橋絵理さんが響き豊かなソプラノでたっぷりと歌われました。
『大地の歌』のソリストは、テノールが、ベンヤミン・ブルンスさん、メゾソプラノがドロテア・ラングさん。お二人ともテキストの内容をじっくりと味わうことのできる、一語一語を大切にした入魂の歌唱でした。オーケストラもマーラーの音楽の言葉をしみじみと伝えてくださいました。
それにつけましても、これほど深い内容を持ち、入念につくられた傑作を、マーラー自身は本格的な音の響きとして聴いていないとは、まことにお気の毒なことでした。
1911年の5月18日にマーラーが永眠して、同年11月20日にこの曲が初演されたわけですが、天国のマーラーが喜んだに違いないことは、初演者がブルーノ・ワルターだったことではないでしょうか。
ワルターの回想録『主題と変奏』を散見しておりましたら、p.258にこんな文章がございました。
「アメリカ人歌手チャールズ・キャヒール夫人とウィリアム・ミラーによる『大地の歌』の初演は最も貴重な芸術上事件として生涯忘れることはできない。それは、マーラーが残してくれた、私自身にとっても極めて大事なこの作品の初演の責任を感じていたことであり、さらには、私は今、本当に彼の身代わりであると感じていたからであり、最後に、私に委託された総譜が今初めて感動的な響きとなり、故人の本質を痛ましいまでに、より近くもたらしてくれたからである」
ワルターのマーラーへの深い思いと、『大地の歌』の初演者の任を果たせたことへの密かな自負と誇りに胸を打たれます。
ワルターは、こんなにもマーラーを敬愛していたのですね。
2024年5月12日記
『大地の歌』のソリストは、テノールが、ベンヤミン・ブルンスさん、メゾソプラノがドロテア・ラングさん。お二人ともテキストの内容をじっくりと味わうことのできる、一語一語を大切にした入魂の歌唱でした。オーケストラもマーラーの音楽の言葉をしみじみと伝えてくださいました。
それにつけましても、これほど深い内容を持ち、入念につくられた傑作を、マーラー自身は本格的な音の響きとして聴いていないとは、まことにお気の毒なことでした。
1911年の5月18日にマーラーが永眠して、同年11月20日にこの曲が初演されたわけですが、天国のマーラーが喜んだに違いないことは、初演者がブルーノ・ワルターだったことではないでしょうか。
ワルターの回想録『主題と変奏』を散見しておりましたら、p.258にこんな文章がございました。
「アメリカ人歌手チャールズ・キャヒール夫人とウィリアム・ミラーによる『大地の歌』の初演は最も貴重な芸術上事件として生涯忘れることはできない。それは、マーラーが残してくれた、私自身にとっても極めて大事なこの作品の初演の責任を感じていたことであり、さらには、私は今、本当に彼の身代わりであると感じていたからであり、最後に、私に委託された総譜が今初めて感動的な響きとなり、故人の本質を痛ましいまでに、より近くもたらしてくれたからである」
ワルターのマーラーへの深い思いと、『大地の歌』の初演者の任を果たせたことへの密かな自負と誇りに胸を打たれます。
ワルターは、こんなにもマーラーを敬愛していたのですね。
2024年5月12日記
コメント