世界最高峰のテノールの一人、イアン・ボストリッジ、歌曲伴奏ピアノのスペシャリスト、ジュリアス・ドレイク、それにいぶし銀の音色を持つホルニスト、アレッシオ・アレグリーニが、昨晩、トッパンホールで夢の顔合わせを実現させました。テノール独唱、ピアノ、それにホルンの加わったアンサンブルのレパートリーが意外に多いのに驚き、そしてその醍醐味を堪能させていただきました。
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◎プログラム

  • シューマン:アダージョとアレグロ 変イ長調 Op.70[アレグリーニ、ドレイク]
  • シューベルト(詩:ゲーテ):
    はじめての失恋 D226/野ばら D257/ガニュメデス D544/
    ミューズの子 D764/さすらい人の夜の歌II〈すべての山頂に〉D768/魔王 D328
    [ボストリッジ、ドレイク]
  • シューベルト:流れの上で D943[ボストリッジ、アレグリーニ、ドレイク]
  • パーセル(ブリテン編):夕べの讃歌[ボストリッジ、ドレイク]
  • パーセル(ブリテン編):女王に捧げる哀歌[ボストリッジ、ドレイク]
  • ブリテン:The Heart of the Matter[ボストリッジ、アレグリーニ、ドレイク]

 ボストリッジの表現力は無尽蔵でした。ドレイクのピアノは、1曲目のホルンとの二重奏のときは、器楽同士のせいか、ワイルドな一面も見せましたが、ボストリッジとのシューベルト歌曲になると表情を変え、テキストの内容と歌い手の表現の方向性に沿って、非常に弾力のある、しなやかな語り口で各曲の世界を完結させました。何という力量でしょうか。
 後半は、17世紀のパーセルと、20世紀のブリテンというイギリスの2大作曲家の作品が並びました。
 ポストリッジの豊かな感情移入は『女王に捧げる哀歌』で最高潮に達し、ブリテンの『The Heart of the Matter』でも、場面が目に浮かぶかのような迫真の歌唱を聴かせます。その合間合間に入るホルンの見事なこと。能弁なこと。
 三人の達人のアンサンブルにうっとりするうち、正規プログラムは終了。
 大喝采に応えて、お三方は次の曲を演奏してくださいました。
◎アンコール
 イグナーツ・ラハナー:遠く去った人に op.23

                                                                                                                        2024年1月24日記