東京文化会館舞台芸術創造事業 現代音楽「かぐや」が本日上演されました。本公演を拝聴できませんでしたので、昨日12日16:00~のゲネプロを鑑賞させていただいてまいりました。コンサートは2部構成で、第1部は室内楽コンサートです。第1部では、2023年6月に70歳で永眠されたフィンランドの世界的大作曲家、カイヤ・サーリアホ女史へのオマージュとして、ユハ・T・コスキネンの箏独奏曲《イザナミの涙》(世界初演)、サーリアホの弦楽四重奏曲《テッラ・メモリア》、横山未央子の弦楽四重奏曲《地上から》(世界初演)が演奏されました。
 そして、第2部が新作舞台劇「かぐや the daughter tree」(世界初演)でした。こちらも、カーリアホ女史の創造魂を受け継ぐ次世代アーティストたちの挑戦、という意味において、サーリアホ女史へのオマージュに他なりません。
   次のようなプロダクションです。
原語(英語)上演/日本語字幕付き
原作:『竹取物語』及び与謝野晶子の詩に基づく
作曲:ジョセフィーヌ・スティーヴンソン
作詞:ベン・オズボーン
振付:森山開次
 テキストを書かれたオズボーンさんと作曲のスティーヴンソンさんは、日本最古の物語『竹取物語』を読み込むうちに、このお話に「人間と自然との共生」「富と所有」「帰る場所の喪失」といった今日まで続く普遍的なテーマを見出されたそうです。スティーヴンソンさんは、かぐやという女性の強さに惹かれたといいます。平安時代の女性だというのに、封建的な男性社会に屈することなく、己の意思を貫くかぐやの生き方は、21世紀の女性たちの共感を呼ぶのではないかとひらめかれたようです。
 一方、竹から生まれたという出自から、「かぐや」は異なる時代と文化に属するアウトサイダーではないかと捉え、この物語を一種の原始的SFとして読み解いたのはオズボーンさんです。
 独り芝居のダンサーとして、出演された森山開次さんは、異文化の宇宙から地球に落された、小さな「かぐや」が竹の中で急速な成長を遂げて、外の世界に躍り出るさま、体験や記憶を重ねて心の質量を増していく過程、でも最後にすべての重さを手放し、月の光となって夜空に昇華していくさまを、圧倒的な身体表現で見せてくださいました。
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 「かぐや姫」ではなく「かぐや」と題されたのは、森山さん演じる主人公が、女性でも男性でもない、異次元からきたアウトサイダーとされているゆえでしょう。
 ほとんどお衣裳をつけず、鍛え上げた体そのものを衣装として繰り広げられる森山さんのパフォーマンスは、かなり刺激的ですが、それにやさしい表情をまとわせたのが、作曲者にして、ソプラノの歌い手でもある、スティーヴンソンさんの、透明感のある、しかも滋味にもあふれた、すずやかなヴォーカルでした。
 器楽の出演者は下記の皆さんです。
山根一仁、毛利文香(ヴァイオリン)
田原綾子(ヴィオラ)
森田啓介(チェロ)吉澤延隆(箏)
                                   2024年1月13日記