昨10月12日の晩、東京文化会館小ホールで、CD「ピアノ作品にみる山田耕筰ルネサンス』発売記念、佐野隆哉 ピアノリサイタル2023~序章~ を拝聴いたしました。佐野さんからは先頃、ご労作CD、山田耕筰ピアノ独奏曲全集をお送りいただいて、耕筰がこの分野にも少なからぬ作品を書いていたこととその作風を知り、隈なく拾い上げて録音作品としてまとめられた佐野さんの緻密なお仕事に感服しておりました。
 昨晩のリサイタルはそのリリース記念ということでしたので、耕作の曲がメインかと勝手に考えておりましたら、耕筰の作品を枕に置いて、彼が影響を受けたかもしれないヨーロッパの作曲家のピアノ曲をそのあとに弾くという、探究的、創造的なコンセプトでした。
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 第一部幕開けは、耕作の「青い焔」。そのあとにドビュッシーの前奏曲集第1巻全曲。  
 「青い焔」について、佐野さんご自身、スクリャービンの影響を指摘されておられますが、ドビュッシーの前奏曲集1巻の前半の何曲かにおもしろいほど似通っていました。
  第二部は耕筰の『哀詩-荒城の月を主題とする変奏曲』とショパンのソナタ第3番ロ短調。2作の間に直接の関連性はみいだせないながら、このカップリングに、どこか納得できるものがございました。耕筰は瀧の「荒城の月」に和声を付け音価を倍にしたときに、ニ短調にあげ、さらにこの華麗な変奏曲を書くときに今度はイ短調に移しましたけれど、瀧の原曲はロ短調なのです。そして耕筰の編曲手法、装飾技法に、ショパンを感じさせる部分もございました。
 佐野さんはアンコールに、耕作の『からたちの花変奏曲』、ショパン『革命のエチュード』、ドビュッシーの『月の光』を弾いてリサイタルを結ばれました。
 1886年生まれの山田耕筰は、1879年生まれの瀧廉太郎のような文部省派遣の国費留学生ではなく、岩崎小弥太男爵のお手元金によるパトロン丸抱えの私費留学生としてベルリンに学んだわけですが、懸命にと申しますが、貪欲に、ヨーロッパの音楽文化を摂取しようとしていたことが、昨夜のリサイタルからもよくわかりました。
 瀧に耕筰ほどの逞しさがあって、病さえ得なかったら、後輩山田に偲ばれるどころか、彼を畏怖せしめるビッグな作曲家になっていたかもしれません。
 あるいは、早世ゆえに、遺された数少ない作品が宝石のように輝いているのでしょうか。
                                       2023年10月13日記