4月27日に紀尾井ホールで開催された、現代屈指のハープ奏者、クザヴィエ・メストレさんのハープ・リサイタルの白眉は、プログラムの最後に置かれたアンリエット・ルニエ『伝説』でした。アンリエット・ルニエ(1875~1956)は、ラヴェルと同年生まれのフランスの女性ハープ奏者・作曲家です。
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 彼女の師匠はアルフォンス・アッセルマン(1845~1912)、門下からはマルセル・グランジャニー、カルロス・サルセードらを輩出しています。この方たちは皆、男性でした。
 幼い日に、アッセルマンの弾くハープに魅せられた彼女は、アッセルマンに師事して高い技術を身に着け、センスゆたかな音楽性を発揮します。しかし、師匠のアッセルマンからは長年冷遇されたと言われます。ルニエのリサイタルか何かの時に、担当者が客演のアッセルマンの名を印刷しそこなったことで巨匠のご機嫌を損じ、ルニエが急いで自腹を切ってプログラムをつくりなおしても、アッセルマンのご機嫌は直らなかったとか……。
 時は流れ、老いたアッセルマンが、ついに彼女をパリ音楽院教授の後継に指名したとき、ルニエは消極的で、結局そのポストにはマルセル・トゥルニエがつき、何年もたってトゥルニエが辞す時にルニエにお鉢が回ってきても、彼女は自分のほうが年長であるからと、この話を断っています。
 そんなわけで、80年の生涯、清貧に甘んじ、出世欲も野心もないルニエでしたが、才能は疑いもありません。1903年、弱冠28歳の時に書いた『伝説』を始め、優れたハープ楽曲を遺しました。
 メストレさん演奏の『伝説』は見つけられませんでしたが、こちらがなかなか雰囲気のある演奏です。
                                 2023年4月30日記  
 
(131) Henriette Renié : Légende - YouTube