楽器演奏にはなんらかの身体的所作が伴いますが、女性奏者の体の動きを、好ましからざるものとみる風潮がかつてはありました。体のくねりや腕、指の蠕動をともなうヴァイオリンなどは最たるものでしたが、その中で、批判の目を逃れた数少ない楽器がピアノとハープでした。
 ですから、ハープ奏者としては比較的早い時期から女性の名が残っています。例えば、昨日、メストレさんがお弾きになったソナタの作曲者、ヨハン・ラディスラウス・デュセックの妻、ソフィア・コッリ・デュセック(1775~1831)も優れたハーピストでした。こちらは夫のデュセックさん。
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 妻の
ソフィア・コッリは作曲も手掛け、ハープやピアノ独奏曲、室内楽曲輪相当数書いたようですが、存命中に彼女の名で出版された楽曲はごくわずかでした。
 昨日、メストレさんがハープに移してお弾きになられた『ピアノ・ソナタ ハ短調』op.35-3も、彼女の作品ではないかと、近年では推定されています。女性の名で出版することへの風当たりを危惧してか、すでに高名だった夫の名で出版した方が売れると判断されたせいかは想像するしかありませんが、やはり、自身の名で出版できなかったことは、ソフィアにとって悲しく、残念なことではなかったかと思われるのです。
                                                                                                               2023年4月28日記