ここ6日間にわたり『プロコフィエフと二人の妻』を連載させていただきましたため、この間のコンサート鑑賞のご報告が滞りました。日にちのたってしまったものはあきらめ、4月24日にサントリーホールで拝聴した、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団特別演奏会『飯守泰次郎のブルックナー』から、再開いたします。この演奏会は今月7日に同じ会場で開かれた『飯守泰次郎のブルックナー交響曲第8番』と対になるもので、今回は第4番『ロマンティック』が採り上げられました。
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 第8番も拝聴しましたが、どちらもきわめて燃焼度の高い、入魂のブルックナーです。今回の第4番など、どうしてこの作品に『ロマンティック』という愛称が付けられたのか不思議に思うほど強靭な響きに満ちた、かつ熱い演奏でした。もっともエキサイティングだったのは、第3楽章のスケルツォ。どこまでもどこまでも天井知らずに音量がアップされました。
 荒井英治さんをゲスト・コンマスに迎えたシティ・フィルも好調。と申しますか、泰次郎マエストロを指揮台に迎えると、このオーケストラは実にパワーを増します。  
 ひとつ、ちょっと珍しい出来事がございました。
 第2楽章の半ばで、チェロ首席の長明康郎(ちょうめい・やすろう)さんの楽器の弦が切れたのです。
 すると、長明さんはすぐに、真後ろのプルトの方と楽器を交換されて弾き続けられ、その方は長明さんのチェロを持って上手袖に消えられました。
 第2楽章が終わると、その方がスーッと入ってこられ、弦を張り替えたチェロを長明さんに渡されました。長明さん、とても嬉しそうにお礼を言われて受け取り、その方に楽器を返します。そして何事もなかったかのように、第3楽章が始まったのです。プロの対処法のなんとさりげないことでしょう。
 弦切れと楽器のリレーは、ヴァイオリンではよくありますが、チェロでこの場面に遭遇したのは初めてのこと。飯守マエストロの名演ともども、しっかり脳裏に刻みました。
                                  2023年4月26日記