今、ヴァイオリン界で目覚しい活躍を見せている辻彩奈さんは1997年岐阜県生まれ。2016年のモントリオール国際音楽コンクール優勝を機に、モントリオール交響楽団、スイス・ロマンド管弦楽団、NHK交響楽団、東京都交響楽団などと次々に協演する一方、マルタ・アルゲリッチ、江口玲らとの室内楽でも活躍されておられます。
 昨日は紀尾井ホールを会場として、辻彩奈の〈8シーズンズ〉と題した、ユニークで意欲的な一種の協奏曲リサイタルを開かれ、大成功を収められました。
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 タイトルから想像がつくように、これは、ヴィヴァルディの《四季》と、ピアソラの《四季》をすべて独奏者として演奏なさる、という企画で、4+4=8  というわけでございます。
 前半にピアソラ、後半にヴィヴァルディでしたが、バックを務めるアンサンブルの顔ぶれがおそろしく豪華なもの。東響コンマスの水谷晃さん、日フィル・アシスタント・コンマスの千葉清加さん、N響セカンド次席の白井圭さん、都響セカンド首席の遠藤香奈子さん、日フィル・ヴィオラ客演首席の安達真理さん、広響ヴィオラ首席の安保恵麻さん、都響チェロ首席の伊東裕さん、東京チェロ・アンサンブルを主宰する三宅依子さん、パシフィック・フィルハーモニア東京のコントラバスの特別契約首席の加藤雄太さんという錚々たる方々です。そして、ヴィヴァルディでは、指揮者としてではなく、チェンバロ奏者として阪哲朗さんが加わられのです。つまり、指揮者なし。
 この豪華な応援団に囲まれ、辻さんは見事な弓使いから生まれる、なめらかで朗々としたイントネーションで8シーズンを巡られました。2年間の旅路です。
 アンコールとして、エルガーの《愛の挨拶》を弾かれたあと、恩師の原田幸一郎先生との念願の初協演だとおっしゃって、原田先生をステージに招かれ、お二人でバッハのドッペル協奏曲の、第2楽章を披露なさったのが最高のご馳走でした。原田先生と辻さんのしあわせそうなお顔のかげに、これまで、どれほどの厳しいレッスンが重ねられたのだろうかと思いを巡らせました。
                                     2023年3月20日記