本夕、東京オペラシティコンサートホールで、牛田智大さんのピアノ・リサイタルを拝聴いたしてまいりました。これまでの、ショパン、リスト、あるいはムソルグスキー『展覧会の絵』などを中心とするプログラムから一歩踏み込んで、シューベルトのハ短調の『アレグレット』を枕に置いたソナタ第13番イ長調、シューマンのソナタ第1番、そして後半に、ブラームスのソナタ第3番、という骨太な選曲でした。ことに、シューマンとブラームスは、単にテクニック的な難度が高いというだけではなく、精緻な解釈と見通しのよい構築力を要求される、おとなのピアニストへの試金石だけに、デビュー11年目とはいえ、まだどこかに少年の風貌を残す、23歳の牛田さんには、少し作品が重いのではなかろうかと、どきどきしなかせら聴かせていただきました。
しかし、曲が始まれば、それはまったく杞憂というもので、シューマンの心の叫びも、ブラームスの剛直な響きも、過不足なく表現されていました。牛田さんは相変わらずスリムな体形でいらっしゃるのに、ブラームスではしっかりと指に体重を乗せて重厚なフォルテもクリアされました。5つもの楽章があるので、まとめにくいソナタですが、曲全体の構成力もお見事でした。
これほどの大曲、重い余韻を残して結ばれたので、もしかしたら、その響きを耳に残したまま家路につく、という贅沢を、わたくしたちはさせていただいてもよかったかもしれません。
2023年3月16日記
しかし、曲が始まれば、それはまったく杞憂というもので、シューマンの心の叫びも、ブラームスの剛直な響きも、過不足なく表現されていました。牛田さんは相変わらずスリムな体形でいらっしゃるのに、ブラームスではしっかりと指に体重を乗せて重厚なフォルテもクリアされました。5つもの楽章があるので、まとめにくいソナタですが、曲全体の構成力もお見事でした。
これほどの大曲、重い余韻を残して結ばれたので、もしかしたら、その響きを耳に残したまま家路につく、という贅沢を、わたくしたちはさせていただいてもよかったかもしれません。
2023年3月16日記
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