萩谷由喜子のブログ

音楽評論家・萩谷由喜子が音楽話題や日々の所感を綴っています。

2024年02月

 昨日、2月28日は17:00より東京文化会館大ホールで、東京二期会、フランス国立ラン劇場との提携公演『タンホイザー』初日を拝見しました。キース・ウォーナーの演出ですが、ちっとも過激でもなく、はなはだしい読み替えもなく、この演出家としてはかなりまっとうなプロダク…
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 昨晩、あるピアノ・リサイタルで、昨年ご逝去された西村朗先生のピアノ曲2作を拝聴する僥倖に恵まれました。プログラムの幕開けに演奏された『薔薇の変容』は、薔薇の容色、色香の移り変わりに女性のそれを重ね合わせた自由な変奏曲で、濃厚なエロティシズムを放つ官能的な…
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 本日2月27日のマチネ公演で、石﨑真弥奈さん指揮 日本フィルハーモニー交響楽団の演奏会を拝聴いたしました。現在進行中の都民芸術フェスティバルの一環として開催された公演です。このフェスティバルのオーケストラ・シリーズには、東京のプロ・オーケストラ8団体が1公演…
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 今月の東京フィルハーモニー交響楽団 チョン・ミョンフン指揮 の定期演奏会は、春の胎動をそこかしこに感じるこの時期にふさわしい、大地に根差したオーケストラ曲、19世紀と20世紀をそれぞれ代表する名作2曲がプログラムに昇りました。 1808年完成・初演のベートーヴェ…
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 一昨日のブログに、インバル&都響の名演でマーラーの交響曲第10番全5楽章(クック版)を聴かせていただいたこと、そして、未完であったこの交響曲がクックによって立派な鑑賞作品としての命を得たことを書きました。しかし、それは、マーラーの死から53年後の1964年のことで…
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 2月23日、東京文化会館のプラチナ・シリーズに大谷康子さんが登場され、イリーナ・メジューエワさんのピアノで、日頃耳にする機会の少ないロシアの作曲家たちのヴァイオリンとピアノ用のソナタや小品に光を当て、それらの魅力をあますことなく満席の聴衆に伝えてくださいま…
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 2月22日、東京藝術劇場のマチネ公演では、エリアフ・インバル指揮 都響 マーラー:交響曲第10番全曲 クック版が休憩なしの75分コンサート、1本勝負で採り上げられました。マーラーは亡くなる前年1910年に、5楽章構成の第10番に着手したものの、この年の夏は彼に、運命の…
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 モーツァルト・ピアノ音楽の研究書も上梓されておられる名ピアニストの久元祐子さんとは、細々とお付き合いをさせていただいております。久元さんがフォルテピアノで演奏なさるモーツァルト~19世紀前半のピアノ作品は、いつ拝聴いたしましてもその温かな響きに魅了されま…
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 諏訪内晶子さんが芸術監督を務める国際音楽祭NIPPONが現在進行中です。この音楽祭はかなり長期にわたるもので、1月にはサッシャ・ゲッツェルさんの指揮で、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲全曲演奏会2公演が東京で開かれ、そのあと2月に入ってから、大船渡、愛知で室内楽…
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 昨日拝見した、東京文化会館制作の音楽舞台作品『ラヴェル最期の日々』の成功要素は数え切れないほど、多々、ございました。中でも、舞台上でこの方あってこそ、と痛感したのは、登場なさったときから「あっ、ラヴェル!!」と思わず叫びたいほど、この作曲家の一種独特の雰…
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 モーリス・ラヴェルは1875年3月7日、スペイン国境に近いピレネー山麓の漁村シブールに生まれました。父ピエール・ジョセフはスイス生まれの技師で、フランス系サヴォア人です。そして母のマリーはバスク人でした。バスク人というのはフランス人ともスペイン人とも異なり、…
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 東京芸術劇場では、日本で上演機会の少ない劇場作品に光を当て、同劇場の音響空間を生かしたコンサート形式上演ながら、歌手たちは衣裳をつけて臨場感のある歌とミニ演技を繰り広げるスタイルの、「コンサートオペラ」シリーズを継続しています。 昨年の第8回は、音楽の抜…
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 昨日、旧居のかたずけ中に、あれやこれやのカセットテープの入った紙袋を見つけました。中に1点、フィリップスから市販された既製品「小澤征爾 マーラー/交響曲を語る」という未聴のカセットテープがございましたので、6日に亡くなられたマエストロのお導きだと感じ、こ…
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 わが国屈指のフルート奏者、工藤重典さんがプロデュースなさり、指揮とソロを担当される、東京チェンバー・ソロイスツの第2回演奏会を、昨2月14日の晩、紀尾井ホールで拝聴いたしました。 開演に先だって、工藤さんがお話をされました。「2月6日に、本当に衝撃的な、悲し…
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  2月11日、12日に、日本オペラ協会公演、新制作『ニングル』の世界初演を拝見したことは書かせていただいた通りですが、それ以来、ずっとこのオペラが頭の片隅を離れません。ゆたかになるために、と言っても、自分個人ではなく村全体がゆたかになることを願って、森を伐採…
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 2月13日の晩、サントリーホールで読響第670回名曲シリーズを拝聴いたしました。3月いっぱいで、同響首席客演指揮者を退任される山田和樹マエストロの、最後をかざる3プログラムの一つです。一つ目の「グラズノフ、ハイドン、カプースチン、ラヴェル」は予定が合いませんで…
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 「ニングル」とは、アイヌの口語伝承に語り伝えられている、地や森を守る小人で、富良野地方のアイヌの民話に登場するとのことですが、実際にニングルが登場する民話は確認されていないそうです。でも、1977年から富良野に移り住み、この地の伝承を生かした作品発信を続け…
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 一昨日の晩、2月9日の読響サントリーホール定期演奏会は、後半の開始時に、指揮者の山田和樹さんから小澤征爾さんの訃報が告げられたことでも、忘れ得ぬ一夜となりましたけれど、それだけではなく、演奏会の企画自体がたいへんアイディアに富んだ、特筆すべきものでした。…
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 山田和樹マエストロ指揮の読響演奏会は、前半がバルトーク『弦楽器・打楽器・チェレスタのための音楽』。小澤征爾先生のご逝去のオフィシャル発表は開演時間と同じ19:00だったため、バルトークの演奏中、山田さんはそれを知らず、休憩時間に告げられて、おそらく、運命的な…
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  2月9日19:00開演、サントリーホールを会場とする、山田和樹指揮、読売日本交響楽団第635回定期演奏会に出掛けておりました。 指揮=山田和樹 尺八=藤原道山 琵琶=友吉鶴心 ●プログラム バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 BB 114 武満徹:ノヴ…
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