萩谷由喜子のブログ

音楽評論家・萩谷由喜子が音楽話題や日々の所感を綴っています。

2023年08月

 昨夕、北原白秋作詩・信時潔作曲の交声曲「海道東征」を聴き、白秋先生の大和言葉の造詣の深さ、語彙の豊富さ、その中から美しい言葉を選ぶセンスにあらためて感嘆したのですが、会場でお隣の席の同業友人から「これと、『万歳ヒットラー・ユーゲント』は白秋の晩節を汚した…
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 8月30日、本夕、東京藝術劇場で開催された、パシフィック・フィルハーモニア東京の演奏会で、北原白秋作詩 信時潔作曲 の大規模カンタータといってよい『海道東征』を聴きました。実演で聴くのはこれが3回目でしょうか。指揮は、同響の音楽監督、飯森範親マエストロでし…
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 このところ、折に触れて、セイヤーの『ベートーヴェンの生涯』を読み返しております。資料の収集と精査、時間をかけた丁寧な取材にもとづいて、先入観や主観を排した、史上初の本格的ベートーヴェン伝記として今なお世界中で読み継がれ、ベートーヴェンの基礎研究のバイブ…
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 8月28日は、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832)のお誕生日なので、亡きゲーテが宰相を務めていた地、ヴァイマールは今もお祭り騒ぎです。この日ならば話題性も充分で、みんな浮かれ気分で劇場に足を向けるだろうと考えた、ヴァイマール宮廷劇場の楽長フ…
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 8月23日から始まったサントリーホールサマーフェスティバルの一環として、25~27日の3日間、ブルーローズ(小ホール)で、ガムラン音楽のプロジェクト型コンサートが開かれました。小ホールの中心には、ジャワの神殿風のカラフルな設営がなされ、多種多様なガムラン音楽の楽…
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 本日は東京芸術劇場で開催された、読売日本交響楽団の《三大交響曲⦆演奏会を聴かせていただきました。指揮は坂入健司郎さん。3日前、23日の同劇場コンサート《三大協奏曲⦆と対になる、坂入さん指揮の公演です。坂入さんは、読響profileによりますと、1988年神奈川県川崎…
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 ベルリン・フィル初の日本人団員として、東西分断時代の同フィルを支えられた名ヴィオリスト、土屋邦雄氏が8月20日に、ベルリンで永眠されました。カラヤン、ベーム、バーンスタインといった巨匠たちの棒のもとで演奏された、おそらく唯一の日本人演奏家ではなかったでしょ…
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 8月23日の晩、東京藝術劇場で開催された、読売日本交響楽団のサマー・フェスティバル《3大協奏曲⦆を拝聴しました。指揮は、若手の坂入健司郎さん。3大協奏曲とは、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調、ドヴォルザークのチェロ協奏曲ロ短調、チャイコフスキーのピ…
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 昨8月22日の晩、中板橋にある100席のホール「マリーコンツェルト(小さな音楽会)」で、フォーレの室内楽コンサートを聴かせていただいてまいりました。前半に、ピアノ四重奏曲第2番ト短調、後半にピアノ五重奏曲第2番ハ短調の2曲。いずれも深い内容と、多様な表現性を持つ傑…
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 今日はもう1曲、リリー・ブーランジェの作品をご紹介いたします。昨日は声楽曲でしたので、今度は器楽曲にいたしました。1917~18年、ですから亡くなる前年から没年にかけて書かれた交響詩『哀しみの夜に』のトリオ版でございます。 ひそやかな哀しみを秘めた旋律が淡々と…
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 2005年に出版した拙著『音楽史を彩る女性たち・五線譜のばら2』では、近代フランス音楽界に咲いた2輪の薔薇、ナディア・ブーランジェと、妹のリリー・ブーランジェ姉妹の生涯と業績を、12話の一つとして紹介させていただきました。 姉のナディア(1887-1979)は、20世紀音…
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 昨19日の晩はサントリホールで、東京交響楽団第713回定期演奏会を拝聴してまいりました。鈴木優人さんの指揮で、メンデルスゾーンの交響曲が2曲採り上げられました。それも、しばしば演奏される第3番《スコットランド》と第4番《イタリア》ではなく、演奏機会のすくない第5…
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 飯守泰次郎先生への追悼記事の続きでございます。新国立劇場オペラ芸術監督時代4年間に、先生がこのオペラハウスのためになされた貢献は、前人未到のもので、この先どなたにも、これ以上のお仕事は不可能ではないかと思います。ことに、ワーグナーの舞台芸術の日本への紹介…
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 本夕は、サントリーホールで開かれた「今井信子 ヴィオラ・スペシャル ~ 傘寿記念演奏会》を聴かせていただいてまいりました。ヴィオラ界の第一人者、今井信子さんは1943年3月生まれでいらっしゃり、今年傘寿をお迎えです。 桐朋学園大学を経てイェール大学、ジュリア…
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 たいへん、悲しく、辛く、残念な訃報に接しました。指揮者で文化功労者の飯守泰次郎先生が8月15日にお亡くなりになられたことを昨日知って、大きな衝撃を受けました。先生は1940年9月30日のお生まれ、来月のお誕生日がくれば、83歳になられるところでした。 ここ近年、腰…
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 昨日は、終戦の日恒例の、東京フィルハーモニー交響楽団ハートフル・コンサートを聴かせていただいてまいりました。今年で33回を迎える平和祈念のコンサートの司会進行は、初回からずっと、黒柳徹子さんが務めていらっしゃいます。以前にお聴きした時は、ご自身の戦争体験…
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 1882年、第2回バイロイト祝祭音楽祭にルードヴィヒが出向けなかったのは、他の招待客に交じってそのような公の場に出ることに気が乗らなかったからばかりではなく、すでに何年も前から常人離れした生活を送っていたからです。 彼はまず、昼夜が完全に逆転していました。夜…
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 第1回バイロイト祝祭音楽祭の開催により15万マルクもの赤字をかかえたワーグナーが、第2回を開くまでに6年もの歳月を要したことは昨日書いた通りですが、この間、彼はこの財政問題に深刻に悩み、一時はバイロイトを手放してアメリカ移住しようかとさえ考えました。むろん、…
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 破天荒な生涯を送ったリヒャルト・ワーグナーが、念願の自作品のみ上演する劇場をバイロイトに建てて、そこでようやく、『ニーベルングの指環』4部作の一括上演をもって、第一回バイロイト祝祭音楽祭の幕を上げることができたのは、1876年の本日、8月13日のことでした。ワ…
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 マルタ・アルゲリッチさんが健康上の理由から、8月12日、ケルンで開かれたウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団のコンサートへの出演を見送られました。15日にスイスのルツェルンで開催予定の同オーケストラのコンサートにも出演なさらないことになったそうです。ただ…
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