萩谷由喜子のブログ

音楽評論家・萩谷由喜子が音楽話題や日々の所感を綴っています。

2023年06月

 第17回チャイコフスキー国際音楽コンクールは何事もなかったかのように開催され、ピアノ部門はロシアのセルゲイ・ダビチェンコ(18)さんが栄冠を手にして6月29日に閉幕しました。この写真は2007年第13回同コンクールの取材時に、クリンのチャイコフスキー記念館のお庭で…
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 日本のクラシック音楽黎明期に政府派遣の初の音楽留学生として海を渡り、ボストンに1年、ウィーンに5年学んで帰国後東京音楽学校教授に就任し、洋学普及のパイオニアとなった幸田延は、ピアニスト、ヴァイオリニスト、声楽家、そして日本人初のソナタ作曲家でもありました…
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 ベートーヴェン唯一のヴァイオリン協奏曲は1806年に作曲され同年12月に初演されました。初演時のソリストはフランツ・クレメントという方ですが、ヴィルトゥオーゾ・タイプのヴァイオリニストでなかったようです。そのせいかどうか、初演時にはあまり評判になりませんでし…
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 今夜、尾高忠明マエストロ指揮 東京フィルハーモニー交響楽団 第987回サントリーホール・シリーズを聴かせていただきました。3曲演奏されたのですが、3曲とも注目プログラムでした。1曲目は2年前に亡くなられた忠明先生の兄上、尾高惇忠先生の、オーケストラのための「イ…
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1825年の春、ベートーヴェンは病の床に就きます。このときは持ち直したものの、翌26年も体調不良が続き、7月には最愛の甥カールの自殺未遂事件という彼の生涯の最大の痛恨事が起きます。こうした心身ともに最悪の状態の中で、彼は、誰からの依頼、つまり委嘱、もしくは注文作…
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 本日6月25日は、東京文化会館小ホールのマチネ公演で、寺田悦子・渡邉規久雄ご夫妻連弾リサイタル「シューベルトの1828年」を聴かせていただいてまいりました。昨日も、同じ時間帯にカルテット・エクセルシオの定期公演を拝聴した会場です。昨日のカルテット・エクセルシオ…
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  古典四重奏団のベートーヴェン全集に戻ります。一通り聴かせていただきまして、それぞれの味わいを堪能させていただきました。曲の名作度、でいえば、順位の付難い一連の傑作がございますし、古典四重奏団の演奏の完成度、燃焼度の高さに感じ入りました作品もいくつかござ…
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 昨晩6月22日のNHK交響楽団第1988回サントリーホール演奏会ではマエストロ・ジャナンドレア・ノセダの指揮で、バッハ=レスピーギ編の3つのコラール、レスピーギ『グレゴリオ風』協奏曲(庄司紗矢香独奏)、ラフマニノフの交響曲第1番ニ短調という、滅多に聴けないプログラム…
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 1822年の11月、ロシア貴族、ガリツィン公爵もしくは侯爵は、ベートーヴェンに次のような手紙を書き送りました。「熱意あるアマチュア演奏家にして、貴殿の才能を賛美する者として、勝手ながらひとつ、2曲、あるいは3曲の書き下ろしの弦楽四重奏を作曲されるおつもりはない…
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 本日は小平楽友サークルの開催日で、現在進行中の「20世紀の名演奏家シリーズ」第8回として「マリア・カラスとルチアーノ・パヴァロッティ」を採り上げました。カラスのほうは1923年12月2日生れですので、生誕100年の今年はことに脚光をあびてよい演奏家ということになりま…
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  古典四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集の鑑賞も、いよいよ後期に入りました。(とはいえ、作品18はまだなのですが)。今日は、第12番作品127と、大好きな第15番作品132を何度も聴かせていただきました。 大晦日恒例のベートーヴェン弦楽四重奏曲9曲演奏会で拝聴し…
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 昨日はCMGフィナーレの記事とさせていただきましたが、今日はまた、古典四重奏団ベートーヴェン全集に立ち戻り、「ハープ」と「セリオーソ」を聴いております。先入観としては、「セリオーソ」のほうがこの方たちのテンペラメントに似合っていると思ったのですが、いえいえ…
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 サントリーホールの6月の風物詩、チェンバー・ミュージック・ガーデンが本日無事に閉幕しました。今年は全部で20公演が開催されまして、そのうちの、エリアスSQのベートーヴェン全曲シリーズ6公演を含む13公演を聴かせていただきました。エリアスと並ぶ大きな海外招聘演奏…
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 コメントにいただきましたように、古典四重奏団のベートーヴェン全集は全曲新録音です。2017年1月の笠懸野文化ホールに於ける、ラズモフスキーの1番に始まり、2019年1月の同じく笠懸野文化ホールの作品132と作品135がこの会場を使った録音で、そのあとは会場を浜松市天龍壬…
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 昨日拝受した、古典四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集を今日も聴き入っております。まず、ラズモフスキーの3曲を繰り返して聴き、曲としてはどれが一番好きか、演奏としてはどれにもっとも心惹かれるかを自分に問うておりますが、3曲ともベートーヴェンの多種多彩…
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 昨6月14日の晩、エリアスSQベートーヴェン・シリーズ最終回を無事聴き終えました。作品18-4ハ短調、作品74変ホ長調「ハープ」、そして最終回にふさわしく、オリジナル・フィナーレ「大フーガ」を具えた第13番変ロ長調作品130の3曲が演奏され、途中メンバーのおはなしもあっ…
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 日本洋楽界の先駆者、幸田延先生は昭和21年6月14日に76歳の生涯を閉じられました。本日は没後77年のご命日にあたります。わたくしが、延先生と妹の安藤幸先生のダブル評伝『幸田姉妹』を出版させていただいたのが2003年でしたので、早くもそれから20年が経ちました。 この…
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 昨晩、エリアス弦楽四重奏団のベートーヴェン、3曲を聴いてまいりました。作品135の終楽章では、昨日のブログに書かせていただいた問いの、答えをなんとかみつけたいものと、一生懸命耳を開いておりました。その結果、わずかにわかったことは、彼らが、迷いなく、肯定的な…
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  今夜のサントリーホール、チェンバー・ミュージック・ガーデンは、英国から初来日したエリアス弦楽四重奏団のベートーヴェン全曲シリースの第5回です。演奏曲は、作品18-6変ロ長調、作品135ヘ長調、ラズモフスキーの2番ホ短調の3曲。 1825年の春、ベートーヴェンは病の床…
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 昨日の記事に書かせていただいたように、昨日6月10日は『トリスタンとイゾルデ』の初演日でしたが、ちょうどこの日と前日の、日本フィルハーモニー交響楽団第751定期演奏会では、幕開けに「前奏曲と愛の死」が演奏されました。指揮は、2005年に東洋人として初めてバイロイ…
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