パンデミックが始まってコンサートが激減したこの2年間、庄司紗矢香さんはモーツァルトをはじめとする18世紀音楽に関する文献を丹念に研究され、その成果を録音作品の形で世に問われました。2009年から14年にわたってベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタのツィクルスをおこなった気心の知れたお相手、ジャンルカ・カシオーリさんとのデュオで、イタリア、モンドヴィの教会を録音会場として2022年5月にモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第28番ホ短調K.304、第35番ト長調K.379、第42番イ長調K.526をレコーディングなさり、先月それをリリースなさったのです。
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 庄司さんは、モダン楽器にガット弦を張られ、モーツァルト時代のクラシック・ボウを使用、カシオーリさんはフォルテピアノを弾いていらっしゃいます。
 わたくしは、自分が箏を弾きますため、このような
木製フレームのフォルテピアノの音を拝聴いたしますと、なんだか箏の音のように感じられて魂がうずいてしまいます。
 庄司さんとカシオーリさんは、単にモーツァルト時代のそれに近い楽器を用いて当時の演奏様式を再現した、というアブローチではなく、それぞれがこの楽器を用いることによって初めて成り立つキャッチボールのような対話や随所に煌めく自己主張に新鮮味が溢れて、このような自己表現のためにはどうしてもこの楽器選択が不可欠だったのだと感じさせるものがございました。
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 これは「Vol.1」とのことで、続きが楽しみでございます。
 それにしても、パンデミック下の逼塞を新たな挑戦への充電に充てられる演奏家魂は、前日ご紹介した広瀬美紀子さんのリムスキー=コルサコフへの取り組みもそうでしたが、まことに見上げたもので、是非、薬にさせていただきたいとまたしても思いました。
                                2022年12月19日記