本日10月14日は、昼公演として、すみだトリフォニーホールで、新日本フィルハーモ二―交響楽団コンサートを拝聴いたしました。上岡敏之指揮、上野星矢さんと山宮るり子さんソロのモーツァルト『フルートとハープのための協奏曲』、田部京子さんソロのベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番、ブラームスの交響曲第2番を聴かせていただきました。
前半にモーツァルトの『フルート&ハープ』、ベートーヴェンの4番、後半にブラームス2番という、かなり重めのこのプログラムは、実は、今年の9月5日に51歳でご逝去された、イギリスの指揮者・ピアニストのラルス・フォークトさんが準備されていたものでした。
ベートーヴェンの4番の弾き振りは、フォークトさんのおそらくもっともお得意とされていたレパートリーで、パンデミック直前の2020年2月に、フランスのナントで聴かせていただきましたが、ピアノの椅子に坐りながらのオーケストラへの目配りの良さに感嘆いたしたのでした。
今回、また聴かせていただけるのを楽しみにしておりましたのに、残念なことでした。新日本フィルでは、フォークトさんのご逝去を心から痛みながら、おそらく、ご遺志を尊重してプログラムを変えることなく、指揮者には前音楽監督の上岡さん、ピアノのソリストにはベートーヴェンの4番に定評のある田部さんをお願いされて、できるだけフォークトさんの目ざされた形に近づけようとなさったのでしょう。ただ、もしもフォークトさんが出演されていらしたなら、オーケストラの音は少し違ったかもしれません。特にブラームスで……。
モーツァルトのソリストお二人に変更はありませんでした。
そして、夕刻からは紀尾井ホールで、鈴木雅明さん畢生のプログラム、バッハ『フーガの技法』をチェンバロ演奏にて拝聴いたしました。
雅明さんは少しだけトークもなさいましたが、それによれば、『フーガの技法』はずっととっておきとなさっていた演目だそうですが、コロナ禍の影響もあり、先月ついに録音なさって、今回、公開の演奏会となられたそうでございます。 こちらが、今宵、雅明さんの演奏された楽器でございます。
『フーガの技法」はバッハの最後の未完作品で、いくつもの謎に包まれていますが、雅明さんは、ここに一つの解釈を示され、後半の鏡像フーガを2台チェンバロでの演奏という形に行き着かれ、ご子息の優人さんを第2チェンバロに招いて、耳を洗うようなアンサンブル作品として具現してくださいました。
最後の「3つの主題によるによるフーガ」はさりげなく進行していきました。そして、あるところから雅明さんの頬が紅潮していき、緊張感が高まったとき、突然のプツン!を迎えるところ、圧巻でございました。
わたくしはここがもっとも、胸に響くと申しますか、胸のかきみだされるところで、こんな風に突然、終わらなければならなかったバッハの創作人生の幕引きを思うと、いつもいつも、胸がチクチクと痛むのでございますが、でもやはり、このようにして偉大な創作者は天に召された、ということを教えていただけて幸いであった、と思う次第でございます。
雅明さん流に、その唐突感を、コラール『我ら苦難の極みにあるとき」を優人さんとのデュオで奏して融和してくださり、今宵の聴衆に慰めがもたらされて、コンサートの幕が引かれました。
2022年10月14日記
前半にモーツァルトの『フルート&ハープ』、ベートーヴェンの4番、後半にブラームス2番という、かなり重めのこのプログラムは、実は、今年の9月5日に51歳でご逝去された、イギリスの指揮者・ピアニストのラルス・フォークトさんが準備されていたものでした。
ベートーヴェンの4番の弾き振りは、フォークトさんのおそらくもっともお得意とされていたレパートリーで、パンデミック直前の2020年2月に、フランスのナントで聴かせていただきましたが、ピアノの椅子に坐りながらのオーケストラへの目配りの良さに感嘆いたしたのでした。
今回、また聴かせていただけるのを楽しみにしておりましたのに、残念なことでした。新日本フィルでは、フォークトさんのご逝去を心から痛みながら、おそらく、ご遺志を尊重してプログラムを変えることなく、指揮者には前音楽監督の上岡さん、ピアノのソリストにはベートーヴェンの4番に定評のある田部さんをお願いされて、できるだけフォークトさんの目ざされた形に近づけようとなさったのでしょう。ただ、もしもフォークトさんが出演されていらしたなら、オーケストラの音は少し違ったかもしれません。特にブラームスで……。
モーツァルトのソリストお二人に変更はありませんでした。
そして、夕刻からは紀尾井ホールで、鈴木雅明さん畢生のプログラム、バッハ『フーガの技法』をチェンバロ演奏にて拝聴いたしました。
雅明さんは少しだけトークもなさいましたが、それによれば、『フーガの技法』はずっととっておきとなさっていた演目だそうですが、コロナ禍の影響もあり、先月ついに録音なさって、今回、公開の演奏会となられたそうでございます。 こちらが、今宵、雅明さんの演奏された楽器でございます。
『フーガの技法」はバッハの最後の未完作品で、いくつもの謎に包まれていますが、雅明さんは、ここに一つの解釈を示され、後半の鏡像フーガを2台チェンバロでの演奏という形に行き着かれ、ご子息の優人さんを第2チェンバロに招いて、耳を洗うようなアンサンブル作品として具現してくださいました。
最後の「3つの主題によるによるフーガ」はさりげなく進行していきました。そして、あるところから雅明さんの頬が紅潮していき、緊張感が高まったとき、突然のプツン!を迎えるところ、圧巻でございました。
わたくしはここがもっとも、胸に響くと申しますか、胸のかきみだされるところで、こんな風に突然、終わらなければならなかったバッハの創作人生の幕引きを思うと、いつもいつも、胸がチクチクと痛むのでございますが、でもやはり、このようにして偉大な創作者は天に召された、ということを教えていただけて幸いであった、と思う次第でございます。
雅明さん流に、その唐突感を、コラール『我ら苦難の極みにあるとき」を優人さんとのデュオで奏して融和してくださり、今宵の聴衆に慰めがもたらされて、コンサートの幕が引かれました。
2022年10月14日記
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