本夕10月13日、すみだトリフォニー小ホールで開催された、日本音楽舞踊会議主催『様々な音の風景ⅩⅧ 」は、たいへんに意義深い公演でございました。近年の日本人作曲家の方たちの作品に、アルバン・ベルクの名作を加えた9つのプログラムが上演されたのですが、どれも、作品に寄せる作曲者の思いと、それを読み解いて音に命を吹き込む出演者の方たちの心意気がひとつになって、9演目、いずれ劣らぬ強いメッセージを性をもって発信されました。
 幕開けの、三善晃『ヴァイオリンソナタ』は、わたくしの敬愛する恵藤久美子先生のヴァイオリン、お嬢さんの佐藤幸子さんのピアノで演奏されましたが、恵藤先生のまことに人間味のある魅惑の音と、この曲のピアノ・ワークのよさを余すところなく表現した幸子さんに心を揺さぶられました。さっちゃん、すてきでしたよ。
 わたくしは、もう20年近く前に『夜明けのピアニスト―田中希代子』を取材執筆いたしましたおりに、希代子さんとフランス留学時代にお親しくされた三善晃先生に取材を快諾していただき、当時、三善先生が館長をお務めでいらした、東京文化会館の館長室で、2時間ほどでしたでしょうか、あれこれと思い出話を語っていただいたことがあり、そのときの先生の温かな人間味に打たれて以来、作品からもお人柄を感じさせていただいております。ですので、今夜のヴァイオリン・ソナタはひとしお、感銘深いものがございました。
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 助川敏弥先生の晩年作を採り上げてくださった深沢亮子先生の名演にもうっとりいたしました。深沢先生、ありがとうございました。助川先生の最後の何年かの作曲時期に、いろいろとお話を伺っていた身としては、こうやって音でそれを確認できますことは本当にありがたいことでした。
 休憩時間にロビーをうろうろしておりましたら、なんと、親しくさせていただいているピアニストの黒岩悠(はるか)さん=指揮者の黒岩英臣先生のご子息にお逢いして、
「えっ、どうしてこのコンサートに?」
「ボク、第2部の2曲目に出演するんです」
 あっ、そう言えば、お名前がプログラムにあったような・・・。まああ、よくわかっていなくて、ごめんなさいませ。
 そして第2部で、北條直彦先生作曲のピアノ独奏曲、『響と空間』『3度と7度のために』『光、そして朝と夕べに』を独奏なさった悠さん、各曲の作曲意図を鮮やかに伝えてくださいました。ことに、変化に富んだ曲想を持つ第3曲は、ピアニスティックな演奏効果にも優れた名演で、たいへん聴き応えがございました。
 中島洋一先生作曲の『フルートとピアノのための「春風」』も、鈴木茜さん、神田麻衣さんの息の合ったアンサンブルで聴かせていただいて心が洗われ、最後にベルクのソナタを、尊敬する北川暁子先生のお見事なソロで拝聴して、大満足で帰途に就きました。
                                   2022年10月13日記