今朝のラジオで、ロンドン生まれのピーター・バラカンさんがエリザベス女王陛下のおちゃめなエピソードを披露してくださいました。
 ご最期の地となったスコットランドのバルモラル城には長年にわたって夏に滞在されるのが習慣でいらっしゃいましたが、同地でのお散歩のときは格式張らず、おつきの男性一人のみが同行されたそうです。そして、行き交う人には笑顔でご挨拶されていたといいます。
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 あるとき、アメリカ人男性二人とご挨拶をを交わされたとき、この二人は相手が女王である事にまったく気づかず、自分たちの滞在期間やホテルの話などして
「ところであなたのお住まいは?」
と聞くので
「自宅はロンドンですが、バルモラルには別荘があるので、もう長年、夏はこちらに滞在しているのですよ」
とお答えになると、アメリカ人は
「それじゃ、エリザベス女王に会ったことがあるでしょ」
と、興味津々に尋ねてきました。そこで女王様の答えていわく、
「わたしは会ったことはありませんが、この人は会ったことがあってよく知っていますよ」
と、おつきを指したのです。アメリカ人たちはもう興奮して、おつきに
「すごい!!  どんな方なんですか?」
「ちょっと厳めしいけれど、ユーモアのセンスのある方ですよ」
 アメリカ人たちは「エリザベス女王に会ったことのある人」と記念写真を撮りたくて、女王にカメラを渡し、
「ちょっと、シャッターを押していただけますか」
 そしてそのあと、女王とも一緒にカメラに収まったそうです。
 無邪気なアメリカ人たちが去ると、女王はおつきに、
「あの人たち、国へ帰ってさっきの写真を誰かに見せたら、わたしが誰かわかるでしょうね。それを知ったときの、あの人たちの顔をみたいものだわ」
 と微笑まれたということです。
 こんなに気さくで、ユーモアのお好きな女王様は、御立場上、何かの好き嫌いを表明なさらなかったとききますが、お好きな音楽は、やはりイギリス音楽だったのかしら? だとしたら、作曲家はどなたがお好きだったのだろうか、と思いを巡らしました。
 エルガーが1930年に、4歳のエリザベス王女と2歳のマーガレット王女のために書いたオーケストラ組曲『子ども部屋』が、女王に捧げられた最初の音楽作品とされていますが、それからの長いご生涯に、ウォルトン、ブリテン、アーノルド、バークリー、ティペットらから、音楽作品を献呈されていらっしゃいます。
 もしかしたら、ヴァイオリンとオーケストラのための小品『あげひばり』、オーケストラ曲『グリーンスリーヴスによる幻想曲』『南極交響曲』などで知られるレイフ・ヴォーン・ウィリアムズさん(1872~1958)も書いていらっしゃらないかしら、と調べてみましたら、この方も女王様の戴冠式のために『古い詩篇の100のふし』を編曲しておいででした。
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 しかも、驚いたことに、本日10月12日が彼のお誕生日にあたり、この方は1872年のお生まれでしたので、150歳のお誕生日だったのでございます。今年はこの方の生誕150年でもあったわけです。
 女王陛下の素敵なエピソードから、お誕生日と記念年に気づかせていただきました。
 女王さま、どうぞ、おやすらかに!
 レイフ・ヴォーン・ウィリアムズさま、お誕生日おめでとうございます!
                                   2022年10月12日記