本夕は紀尾井ホールで、礒絵里子さんのデビュー25周年記念コンサート《2つの『四季』》を聴かせていただいてまいりました。2つの四季、即ち、ピアソラ(1921~1992)の『ブエノスアイレスの四季』と、イタリア・バロックのアントニオ・ヴィヴァルディ(1678~1741)のヴァイオリン協奏曲集『四季』の両方をお一人で、室内オーケストラ・バックに独奏されるという、まことに意欲的なプログラムでした。
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 室内オーケストラのコン・ミスは、仙台フィルのコン・ミスの神谷未穂さん、以下、第2ヴァイオリンの頭は佐分利恭子さん、ヴィオラは柳瀬省太さんと三浦克之さん、チェロは海野幹雄さんと新倉瞳さん、通奏低音のチェンバロは西山まりえさんほかの豪華メンバーです。
 わたくしは、絵里子さんがデビューされて間もない時期、神谷未穂さんと「デュオ・プリマ」というヴァイオリン2挺のアンサンブルを組まれたときに、インタビューさせて以来のお付き合いがあり、さまざまなシーンで、絵里子さん、未穂さんの演奏を聴かせていただいてまいりましたので、25周年とうかがえば、感慨もひとしおでございました。絵里子さんと未穂さんは、プリマ、つまり従姉妹同士でいらっしゃいます。  
 今宵の2つの四季は、前半がピアソラ、後半がヴィヴァルディでした。前半のピアソラを聴くと、彼がアルゼンチン発祥のタンゴに自身のoriginalityを加味した独自のモダン・タンゴのスタイルの中に、いかに、うまいこと、バロックのヴィヴァルディを取り込んでコラージュしたかがよくわかり、たいへんおもしろく感じました。『秋』の海野さんのチェロのカデンツァ、『春』の西山まりえさんの最後のチェンバロの独白。絶品でした。
 とりわけ、ソロの絵里子さんは4+4の8つの季節。楽章でいえば、ピアソラは単一楽章としても、16楽章ものソロをたったお一人で独奏なさるという大変な試練でいらっしゃいましたが、最後まで立派にゆとりあるソロを聴かせてくださいました。
 これも、日頃のご精進のたまものでしよう。最後にアンコールとして、ヴィヴァルディの『冬』の第2楽章ラルゴを演奏してくださいましたところ、これまでの緊張感がほぐれて、正規プログラムの時とは一味異なる自由闊達な名演となりました。
 おめでとうございます! 絵里子さん。益々のご活躍を!!
                                                                                                                   2022年10月11日記