サー・サイモン・ラトルは1955年1月19日リヴァプール生まれ。1980年にバーミンガム市交響楽団の指揮者に就任してこのオーケストラを世界レベルにまで高め、2002年にはクラウディオ・アバドの後任としてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者兼音楽監督に就任しました。この時代に、数々のコンサートと録音に大業績を上げたのち、2017年秋のシーズンからは、母国イギリスのロンドン交響楽団の音楽監督に迎えられ、こんにちまで多くの業績を上げています。
 そのラトル率いるロンドン交響楽団が、2020年のコロナ禍による来日中止の試練を乗り越えて、このほど来日を果たし、9月30日の京都コンサートホール公演から10月9日の北九州公演までの9公演を実現させました。そのうち、10月5日、6日両日のサントリーホール公演を聴いてまいりました。
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 5日のプログラムは、シベリウスの交響詩『大洋の女神』、同じく『タピオラ』に、ブルックナーの交響曲第7番をとりあわせたもの、本日6日の公演は、ベルリオーズの序曲『海賊』、武満徹の『ファンタズマ/カントスⅡ』、ラヴェルの『ラ・ヴァルス』、シベリウスの交響曲第7番、バルトークの『中国の不思議な役人』でした。
 5日の公演では、コントラバス8台を正面後方にずらりと並べ、弦を対向とした配置でラトルは譜面台を置きましたが、本日6日は、みごとに一変して、コントラバスを上手にもっていき、弦を通恒配置として、ティンパニを上手斜め後方、それを両脇から、下手のホルンと、上手のトランペットとトロンボーンがはさむ、珍しい配置でした。
 多彩な曲目、すべて暗譜。どの演目にも優劣がなく、ことごとくラトルとメンバーの手のうちに入っていたことに打たれます。弦の音色の限りない深み、どんなフォルティシモでも濁らない金管と打楽器、人格の宿ったが如き能弁な木管。
 困難を乗り越えてきていただいたことで、その喜びが音に如実に表れていたと感じました。
 昨晩は、しみじみと胸打つ荘厳なブルックナー7番で終わりましたので、アンコールはありませんでしたが、今夜はマエストロ・ラトル自身のお口から曲目紹介があり、絶品のフォーレ『パヴァーヌ』が演奏されました。
                                         2022年10月6日記