20世紀日本作曲界の旗手のお一人、別宮貞雄(べっくさだお)先生は1922年のお生まれで2012年に亡くなられました。わたくしはコンサートでしばしば、別宮先生のお姿をお見かけしつつ、お話したことはございませんでした。今年は先生の生誕100年、没後10年に当たります。

こうして一挙に同じ作曲家の器楽協奏曲を続けて拝聴しますと、別宮先生の創作姿勢、目指すところがみえてきたように思いました。それはすなわち、古典の形式と規範を重んじ、主題やモティーフをできる限りわかりやすいものとしつつ、全体を緻密に組み立てて歌うところは思い切り歌い、どなたが聴いてもその方の琴線をなんらかの形で打つ、そのような音楽だと感じました。
チェロ協奏曲は、岡本さんの名演はご立派ながら、作品自体にこの楽器の特質が生かしきれない憾みがございましたが、ヴィオラ協奏曲とヴァイオリン協奏曲は大変結構でした。ヴィオラ協奏曲のソリスト、ティモシー・リダウトさんは1995年ロンドン生まれの若手で、同曲の初演者、今井信子さんのお弟子さんとのこと。この地味な楽器のソリストとして、新境地を開かれる方とお見受けしました。
南紫音さんも名演でした。曲は、コルンゴルト、ストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲に通じるところのある作品で、第2楽章はそっくりカデンツァになっているスタイルですが、南さんの力演で全体像がよく見え、別宮先生の目指すところもイメージできました。こちらの初演者は、黒沼ユリ子さんです。優れた音楽作品はこのようにして、次の世代の演奏家の手へとバトンタッチされていくものなのだ、としみじみ思いました。
下野マエストロと山本友重マエストロほか都響の皆様、3名のソリストの方たち、ありがとうございました。
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