世界屈指のSPレコード・コレクター、研究家のクリストファ・N・野澤先生が89歳で世を去られたのは、2013年8月13日でした。先生の多大なご助力のもとに何とかまとまった『宮澤賢治の聴いたクラシック』(小学館)の出版目前のことでした。今、本の奥付を見てみましたら、発行日が2013年9月17日となっていて、それより少し早く出来上がっていますから、本当に、あともう2~3週間ご存命でしたら、本をお手に取っていただけましたのにと、残念でなりません。
 その後、おりにふれて、雑司ヶ谷墓地の墓所に詣でてまいりましたが、このたびは秋のお彼岸のうちに、と同書のプロデューサー、エディター、著者のわたくしの3人組でお彼岸最後の日の昨日、秋の陽ざしに照らされながら、心をこめてお詣りさせていただきました。
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 3人とも、野澤先生にヒストリカル録音を師事した教え子でございます。先生からは、たんに、歴史的レコードの聴きどころや往年の演奏家について教わっただけではなく、それらを考証し、文章に起こすに際しての基本姿勢というべきものを、厳しく温かく諭していただいたことが忘れられません。まことにたくさんのことを学ばせていただきました。
 前にもこのブログに書きましたように、独身でいらした先生にはお墓守をするご親族がなく、お墓の将来が案じられますが、今しばらくはともかく、こうして時々、お花を手向けに伺って、先生と対話させていただけることが喜びでございます。
                                      2022年9月27日記