本日9月13日は、クララ・シューマンのお誕生日でございます。1819年のこの日に、ライプツィヒで音楽教室兼貸し楽譜、貸しピアノ業を営むフリードリヒ・ヴィークと、元は弟子であったピアニストにして歌手の妻マリアンネとの間にクララは生まれました。妻を私物と見なして、レッスンにこきつかう一方、ある時はピアニスト、あるときは歌手としてコンサートに出演させ、その成功を自分の手柄とするヴィークの専横に耐えかねてマリアンネは離婚を決意しますが、ザクセンの法律は父系社会の規範にのっとっていたため、せっかく連れて出たクララを、ヴィークのもとへ戻さなければなりませんでした。
 そんなわけで、5歳から父の手で育てられたクララは、体系だった音楽教育をうけ、少女ピアニストとして名声を高めていくと同時に、当時のソリストには自作自演も大切な成功条件だあったことから作曲も正式に学んで、早くから曲も書きました。
 想像を絶する茨の道を乗り越え、21歳のお誕生日の前の日、1840年9月12日にロベルト・シューマンと結婚後は、独身時代よりも作数は減りましたが、ほそぼそと作曲を続けます。
 そのなかでも最大傑作は、1846年の結婚記念日の夫への贈り物として書いた『ピアノ三重奏曲ト短調』作品17です。クララは27歳。ロベルトは36歳。実はロベルトは、この時点ではまだ、ピアノ三重奏曲、という分野が未開拓だったのです。
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「えっ、僕が書いたことのないピアノ・トリオを君が先に書いちゃったの! しかも飛び切りの傑作じゃないか。よーし、僕もこうしちゃいられない」
 これが刺激となって、彼は返礼に、翌年のクララの誕生日プレゼントとして、彼初のピアノ三重奏曲を書き、さらにその後、あと2作も書くことになります。
 つまり、クララの作品はそれ自体優れているだけではなく、ロベルトの3作のピアノ三重奏曲誕生の引き金となったのでした。
 本日は、これを皆様にも是非お聴きいただきたいと動画を探し、これを見つけました。
 お聴きいただけましたら嬉しく存じます。
 いかにもクララらしい、繊細でたおやかな楽想と、おしゃれなピアノ・ワークが魅力でございます。
ATOS Trio: Clara Schumann - Trio in g-minor, op.17 - YouTube

                                  2022年9月13日記