アリス=紗良・オットさんがコロナ禍に遭遇なさった中で悩まれた末に手探りで到達なさったのは、オットさんがもっとも心を惹かれる現代作品を、ショパンの『前奏曲集』作品28の随所に織り込み、それに映像をコラボレーションさせた「ECHOES OF LIFE」と名づけたリサイタル・プログラムでした。本夕はそれを、サントリーホールで拝聴してまいりました。
 昨日の仲道郁代さんのリサイタル時に、客席の電子音が長時間にわたって鳴り響いた教訓が生かされ、開演前には何度も何度も、電子機器類のスイッチをお切りください、とのアナウンスと、レセプショニストの方たちのインフォメーションがございました。
 さて、本公演は、ショパンの『24のプレリュード』op.28の全24曲の随所に、オットさんの心を動かした現代作曲家、二―ノ・ロータ、リゲティほかのピアノ小品を織り込みつつ、彼女のイメージにもとづく映像ワークが、背後の大きなスクリーンに映写されるという趣向でございました。
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 映像作品は、非常に繊細緻密に制作されたもので、例えば、宇宙の星屑でありますとか、大きな図書館の書棚でありますとか、それらが勢いを得て遠近自在にズームし、さらに光の投影を与えられて生き物のごとくに動きました。具象といえば具象ですが、人物も動物もドラマ性も徹底的に排されていたがゆえに、鑑賞者それぞれのイメージでどうとでもとらえることのできる、自由度の高いプロダクションでした。よって、聴き方を縛ることはありませんでした。
 もしもショパンが、サントリーホールの客席におられたら、一体どんなお顔をされるのか想像しながら拝聴いたしました。
 オットさんは終演後そのまま空港に向かわれてドイツにお帰りとのこと、またのご来日を楽しみにいたしております。
                                 2022年5月30日記