5月16日の晩、東京オペラシティコンサートホールで、別府アルゲリッチ音楽祭の東京公演「オーケストラ・コンサート」が開かれました。アルゲリッチさんはシューマンのピアノ協奏曲をチョン・ミン指揮の東京音楽大学オーケストラ・アカデミーと協演されたのち、チェロのマイスキーさんを迎えて、同じくシューマンの『幻想小曲集』にため息の出るようなアンサンブルを繰り広げてくださいました。
シューマンはアルゲリッチさんの数あるコンチェルト・レパートリーの中でもことにお気に入りの一曲で、アルゲリッチさんの魅力が十全に開花する協奏曲です。昨晩のソロも始まったときから一音一音の抜けのよい響きにまず打たれました。こんなにもピアノとはよく鳴る楽器なのかと思うほど、一台のピアノから倍音という倍音がゆたかに立ち昇って美しくブレンドされ、もうピアノだけでもおなか一杯になるほど楽の響きにあふれているのです。その魅惑の音で曲の各部の性格をすみずみまで掘り下げ、生き生きと表情豊かにシューマンの世界を現出なさいました。
オーケストラもこの日のためによくよく練習を重ねてきたのでしょう、チョン・ミンさんの棒に忠実に従って、ソリストの音楽志向の邪魔は一切せず、控えめながらしっかりとサポートされていました。普通のオーケストラとソリストですと、ともすれば、オーケストラがソロにかぶせてしまい、ハラハラすることもございますが、昨晩は逆で、アルゲリッチさんのピアノがあまりにもよく響き、炎の主張に満ちているためにオーケストラが霞んでしまうほどでした。でも、そこは大ベテランのアルゲリッチさん、オーケストラをかき消す寸前で、巧みにコントロールlされておられました。
マイスキーさんは、13日に宮崎で、やはりシューマンのピアノ・カルテット他を拝聴したばかり。アルゲリッチさんとのデュオは、お二人とも一見、まったく相手に構わすご自分のなさりたいことを遠慮会釈なく自由奔放に突き進んでいらっしゃるようでありながら、見事にぴたりとしたアンサンブルが実現されるのです。
これはもう、互いにお相手を知り尽くしていて、こう出ればこうくる、というのが飲み込めておられるからに違いございません。
さらに、大拍手に応えてアンコールを弾いてくださろうとなさいます。何を聴かせていただけるのか、わくわくしておりますと、なんと、ショパンの『序奏と華麗なるポーロネーズ』ではございませんか。このような大きなものを弾いていただけるとは思いませんでしたので、大感動でございます。さらにショパンのチェロ・ソナタの緩徐楽章まで聴かせてくださいました。ありがとうございました!
後半はオーケストラ・コンサートで、ブラームスの1番です。東京音楽大学の皆さん、とてもお上手です。特にオーボエの女性、それからクラリネットの女性もよく健闘されておられるのに感心いたしました。指揮のチョン・ミンさんは、ミュンフンさんの息子さんで、前にも拝聴したことがございますが、お父さまのお若い頃によく似ておいでです。指揮台に立たれた後ろ姿、お背中の感じもそっそくなら、指揮ぶりも音楽づくりもまことにお父さま似で、大仰なところがなくきびきび、ピシッとした品のある振り方をなさいます。客席にはお父さまの姿があり、きっと、ご子息のご成長ぶりを嬉しくみつめていらっしゃったのではないかと想像いたしました。
2022年5月17日記
シューマンはアルゲリッチさんの数あるコンチェルト・レパートリーの中でもことにお気に入りの一曲で、アルゲリッチさんの魅力が十全に開花する協奏曲です。昨晩のソロも始まったときから一音一音の抜けのよい響きにまず打たれました。こんなにもピアノとはよく鳴る楽器なのかと思うほど、一台のピアノから倍音という倍音がゆたかに立ち昇って美しくブレンドされ、もうピアノだけでもおなか一杯になるほど楽の響きにあふれているのです。その魅惑の音で曲の各部の性格をすみずみまで掘り下げ、生き生きと表情豊かにシューマンの世界を現出なさいました。
オーケストラもこの日のためによくよく練習を重ねてきたのでしょう、チョン・ミンさんの棒に忠実に従って、ソリストの音楽志向の邪魔は一切せず、控えめながらしっかりとサポートされていました。普通のオーケストラとソリストですと、ともすれば、オーケストラがソロにかぶせてしまい、ハラハラすることもございますが、昨晩は逆で、アルゲリッチさんのピアノがあまりにもよく響き、炎の主張に満ちているためにオーケストラが霞んでしまうほどでした。でも、そこは大ベテランのアルゲリッチさん、オーケストラをかき消す寸前で、巧みにコントロールlされておられました。
マイスキーさんは、13日に宮崎で、やはりシューマンのピアノ・カルテット他を拝聴したばかり。アルゲリッチさんとのデュオは、お二人とも一見、まったく相手に構わすご自分のなさりたいことを遠慮会釈なく自由奔放に突き進んでいらっしゃるようでありながら、見事にぴたりとしたアンサンブルが実現されるのです。

さらに、大拍手に応えてアンコールを弾いてくださろうとなさいます。何を聴かせていただけるのか、わくわくしておりますと、なんと、ショパンの『序奏と華麗なるポーロネーズ』ではございませんか。このような大きなものを弾いていただけるとは思いませんでしたので、大感動でございます。さらにショパンのチェロ・ソナタの緩徐楽章まで聴かせてくださいました。ありがとうございました!
後半はオーケストラ・コンサートで、ブラームスの1番です。東京音楽大学の皆さん、とてもお上手です。特にオーボエの女性、それからクラリネットの女性もよく健闘されておられるのに感心いたしました。指揮のチョン・ミンさんは、ミュンフンさんの息子さんで、前にも拝聴したことがございますが、お父さまのお若い頃によく似ておいでです。指揮台に立たれた後ろ姿、お背中の感じもそっそくなら、指揮ぶりも音楽づくりもまことにお父さま似で、大仰なところがなくきびきび、ピシッとした品のある振り方をなさいます。客席にはお父さまの姿があり、きっと、ご子息のご成長ぶりを嬉しくみつめていらっしゃったのではないかと想像いたしました。
2022年5月17日記
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