スペイン内戦中の1937年4月26日、フランコ叛乱軍と手を組んだドイツ空軍は、共和政府支持色の強い北部の古い町ゲルニカを攻撃目標と定め、周到な作戦にもとづいて空からの絨毯爆撃を執拗に繰り返して、何の変哲もない普通の日常生活を営んでいた無防備な市民を無差別に殺戮しました。  
 いったいどれくらいの数の市民が殺害されたのか、いくつかの見解があるそうですが、およそ2,000人と捉えてほぼ間違いはなさそうでございます。このゲルニカ爆撃こそ、近代戦に新たに加わった恥ずべき戦略「無差別都市爆撃」の最初の例とされ、8年後の東京大空襲、広島と長崎への原爆投下の悪魔的呼び水となったと、わたくしは認識しております。
 そしてこの残虐で卑劣なやり口が、現在のウクライナ諸都市へのロシア軍による戦車攻撃や空爆に継承されていることは申すまでもございません。
 戦車もミサイルも銃も持たない芸術は、それに対して無力なのか?
 答えは、こちらの絵画でございます。これは、
ゲルニカ=ルモ・ムニシピオ(基礎自治体)にある実物大のセラミック製壁画レプリカでございます。
Mural_del_Gernika

 スペイン出身の画家パブロ・ピカソは、そのときパリにいて、私生活上のわずらわしいこともあり創作は滞りぎみだったということですが、ゲルニカ爆撃を知るとただちに綿密な綿密な構想を立てて、この一分の隙もない作品をわずか一か月ほどで完成させたそうでございます。
 武器も加害者も描かれていないのに、平和な日常をずたずたに切り裂かれ、わけもわからぬまま殺害されていった無辜の市民、馬や牛の阿鼻叫喚を描くことによって、彼らをこの状態に陥れた者の行為と背後の思想を鋭く断罪しています。
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 今、きっと、世界のどこかで『ハルキウ』という絵画が描かれているに違いございません。
 それはあるいは、オーケストラ曲『ハルキウ』かも知れません。
 「ゲルニカ爆撃日」という、人類の恥ずべき記念日に、声を大にして戦争の終結と平和を訴えたいと存じます。 
                                   2022年4月26日記