本日は、ダニエル・バレンボイムさまの健康回復祈願とマエストロへの期待を書かせていただきます。19421115日、アルゼンチンのブエノスアイレス生れでいらっしゃいますから、現在79歳。415日の時事通信は、ベルリン国立歌劇場の発表として、バレンボイムさまが循環器系の疾患によって現在治療中であること、ドクターの勧めで422日までのすべての公演を中止することになった、とのニュースを伝えました。

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 マエストロ・バレンボイムの降板に伴い、414日の『コシ・ファン・トゥッテ』は、マエストロ・ジュゼッペ・メントゥッチャが、416日の『フィガロの結婚』はマエストロ・トーマス・グッゲイスが代役として振られたそうです。22日まで、ということなので、それほど重い病状ではないように思われますが、この機会に、ゆっくりと骨休めをなさって今後に具えていただきたいものでございます。

と申しますのも、この方は、悪魔軍のウクライナ侵攻が始まってまもない時期、36日に「ウクライナと連携する」旨をはっきりと表明なさった音楽家だからです。

 この日バレンボイムさまは、ベルリンで、ご自身が音楽総監督を務めるベルリン国立歌劇場管弦楽団を率いてウクライナ支援の演奏会に出演なさり、スピーチの場も設けてウクライナ人と連帯する意思を表明なさったそうです。その一方、昨今の、ロシアの人々や文化を無差別に拒否しようとする風潮に対しては「最悪の連想を呼び起こす」として異議を唱えられたということです。

マエストロのお話の趣旨は以下の通りでございます。

「わたしたちの願いは、一刻も早く撃ち合うことをやめ、対話を始めることです。わたしたちが音楽から何かを学べるとすれば、それはわたしたちがコントラストや違いとともに生きることができるということ、また、そうしなければならないということです」

 マエストロの祖父母はベラルーシとウクライナのご出身で、ロシア国内における凄まじいユダヤ人迫害行為ポグロムを逃れてアルゼンチンに渡ったユダヤ人です。お父さまのエンリケさんははブエノスアイレスでピアニストになられ、息子さんの彼にピアノの最初の手ほどきをされました。彼は7歳でピアニスト・デビュー。その後、1952年に一家でイスラエルに移住、彼はザルツブルクでマルケヴィッチの薫陶を受け、亡くなる数カ月前のフルトヴェングラーにも面会が叶い、巨匠をして「この子は天才だ!!」と言わしめたお話はあまりにも有名でございます。

そのような家族のルーツをお持ちですから、今回の悲惨な軍事侵攻とそこから生じた諸問題について、人一倍、憂慮されておられることは間違いございません。

 今、この重大な時期に、これほどの大物音楽家が明瞭な発信をされていることは極めて貴重なことです。どうぞ、お体の心配事を取り除き、ウクライナ支援の力強く温かなご発信を今後とも続けてくださいませ。

                                    2022421日記