さきほど、KAJIMOTO さまより、所属ピアニストのニコラ・アンゲリッシュさんの悲しいお知らせをいただきました。

訃報:ニコラ・アンゲリッシュ氏

 

ピアニストとして世界的に活躍をしていたニコラ・アンゲリッシュ氏が、2022418日パリ市内の病院にて慢性的な肺疾患のため51歳で亡くなりました。

弊社では日本をはじめとしたアジアでの演奏活動のマネジメントをさせていただいておりました。故人の冥福をお祈りし、ここに謹んでお知らせいたします。

 

19701214日アメリカ生まれ。13歳でパリ国立音楽院に入学し、チッコリーニ、ロリオ、ベロフらに師事。フライシャーやピリスらにも学び、1994年にジーナ・バッカウアー国際コンクールで優勝。2003年にはマズア指揮ニューヨーク・フィルとベートーヴェン「皇帝」を弾いて同団にデビューした。

デュトワ、ユロフスキ、ネゼ=セガン、ソヒエフ、ハーディングらの指揮のもと、パリ管、ロンドン響、ロサンゼルス・フィル、マリインスキー劇場管、マーラー・チェンバー・オーケストラなどと共演。ロンドン、ミュンヘン、アムステルダム、ローマ、パリなどの主要都市でリサイタルを行い、アルゲリッチ主宰のルガーノ音楽祭から定期的に招かれている。

室内楽にも力を入れ、アルゲリッチ、シャハム、ヨーヨー・マ、ルノー&ゴーティエ・カプソン、モディリアーニ四重奏団などとも共演。

古典、ロマン派から現代音楽までレパートリーは広く、ベートーヴェンのピアノソナタ全曲やリストの「巡礼の年」全曲を世界中で演奏。マントヴァーニ「Suonare」、アンリの「オーケストラのないピアノ協奏曲」などを初演している。

レコーディングも多く、J.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」やラフマニノフやラヴェルの作品集、リスト「巡礼の年」全曲(ショク賞受賞)、P.ヤルヴィ指揮hr響との共演によるブラームスのピアノ協奏曲2曲、プレイエル・ピアノを弾いたベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番、第5番「皇帝」(エキルベイ指揮インスラ・オーケストラ)、2021年には最新アルバム「プロコフィエフ:ピアノ作品集」をリリース。作曲家独自の心理と作曲理念を的確に捉える、素晴らしい名演を残している。


 
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 わたくしが最後に聴かせていただいたのは、もう2年前、2020年2月14日、ヴァイオリンの諏訪内晶子さんが音楽監督を務めておいでの、国際音楽祭NIPPONの一環として、オペラシティコンサートホールで開かれた、諏訪内さんとのデュオ・コンサートのことでした。諏訪内さんとは、ある時期よく協演されて、CDもお出しになっておられたのがちょっとご無沙汰になり、しばらくぶりのお顔合わせでした。
 演奏会の少し前、諏訪内さんにインタビューさせていただいたので、デュオ復活の経緯をお尋ねすると、どこかの音楽祭でしたで久しぶりに再会されて、どちらからともなく「また一緒にやりましょう」ということなったのと、わくわく気分でおっしゃっておられたことを思い出しました。
 曲目はオール・ベートーヴェン。5番、7番、9番、という花形ソナタ3曲。久々のデュオは、間があいた分だけかえってお互いを再認識でき新鮮味が増すのか、水も漏らさぬ緊密なアンサンブルが築かれていて、デュオ復活が大成功だったことがわかりました。

 その後の来日はなく、どこかで「ご療養中」とうかがったような気もいたします。

 51歳という、まだまだこれからのときに、愛するピアノや、愛する方々とお別れをなさらなければならなかったとは、さぞご無念であられたことでしょう。今日は、録音作品を拝聴して、ご冥福を祈らせていただきます。どうぞ、安らかにお眠りくださいませ。
                                     2022年4月19日記