悪魔の蛮行に憤って毎日があっというまに過ぎるうち、もう10日も経ってしまったのですが、3月31日は音楽、舞踊、舞台美術すべてを巻き込んだ芸術の大変革者、セルゲイ・ディアギレフ(1872~1929)の生誕150年記念日でした。それに合わせて、ワーナーから、とてつもない価値のある音楽資料 『『セルゲイ・ディアギレフ~バレエ・リュス』(22枚組)が非常に良心的な価格で発売されました。
こちらはタワーレコード情報でございます。Various Artists
- 発売日
- 2022年03月11日
- 通常価格
¥9,290
- セール価格
- ¥7,896
「天才を発見する天才」といわれた空前絶後のインプレサリオ、ディアギレフは、ロシアのウラル山脈に近いペルミに、地方貴族の子として生まれました。若い時からヨーロッパ芸術にあこがれていた彼が、舞台総合芸術、それもオリジナル作品をメインとする芸術の香気ゆたかなバレエの上演を目指して、パリにロシア・バレエ団「バレエ・リュス」を旗揚げしたのは1909年のことでした。
最初のシーズンにはニコライ・チェレプニン(アレキサンドルの父)のバレエ音楽『アルミードの館』Op.29を上演、1910年には、ボロディン(R=コルサコフ&グラズノフ編)の『だったん人の踊り』、R=コルサコフの交響組曲『シェエラザード』Op.35、ウェーバーの『舞踏への勧誘』など既成音楽によるバレエのほか、若きストラヴィンスキーのオリジナル『火の鳥』を上演して大成功を収め、12年の『ペトルーシュカ』、13年の『春の祭典』と続いていきました、というふうに、理解しがちですが、これらはほんの氷山の一角にすぎないことがディアギレフ生誕150年記念のこのとてつもない労作、22枚組のボックスCDによってはっきりとわかりました。
22枚のCDには、年代順に上演作品の音楽が近年の名指揮者、一流オーケストラの名演によって収められていて、拝聴していくと「バレエ・リュス」の歴史が手に取るようにわかります。
ディアギレフは、ニジンスキー、フォーキン、マシーン、カルサヴィナら多くのダンサーを見出しました。その最後の大物が、1953年に日本に来たこともある20世紀を代表する舞踊家の一人、セルジュ・リファール(1905~1986)でした。
この写真はボックスCDの解説書にあったもので、左からリファール、ディアギレフの伝記作者となるヌーヴェル、坐っているのがディアギレフ。
晩年のディアギレフは不遇で病も抱え、ヴェネツィアに静養します。いよいよ病が悪化した時に駆け付けて看取ったのは、台本作家のボリス・コノフ、芸術のパトロネスとして有名だったミシア・セール、バレエ・リュスの衣装も手掛けたココ・シェネル、そしてウクライナ・コサックを先祖に持つ、キーウ生まれのリファールだったのです。
2022年4月11日記
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