一昨年の生誕250年記念年以来2年間、4シリーズ、ベートーヴェンをテーマとしてまいりました、小平楽友サークル講座が、現在進行中、本日が最終回に当たる弦楽四重奏シリーズで完結いたしました。弦楽四重奏曲は、前期から2曲を聴き、中期、後期はすべて聴き終えましたので、最終回の今回は気分一新で、映画鑑賞会といたしました。鑑賞作品として2010年、イギリス・オーストラリア合作映画『英国王のスピーチ』を選ばせていただきました。 
OIP

 現エリザベス女王のご尊父ジョージ6世の若き日の物語です。ジョージ5世の次男である彼には、人前で話すとき言葉がうまく出てこないという悩みがありました。しかし、彼にはエドワードという兄がいますので、王位を継がなくてよい立場だったのですが、この兄が二度の離婚歴のあるアメリカ人女性ウォリス・シンプソン夫人との結婚を選んで王冠を投げうったため、内気な彼がジョージ6世として即位することになったのです。時あたかも、ナチス・ドイツがポーランド国境を侵犯してヨーロッパ全体を巻き込む戦雲の広がろうとしていた時期です。イギリスはドイツに、即時ポーランドからの撤退を求めますが、ドイツはこの勧告を無視して、戦争は不可避となりました。
 この一大国難を迎えて、国王は全国民に戦争に至る経緯を説明し、士気を鼓舞するラジオ・スピーチをしなければなりません。
 言語聴覚士ローグの協力を得て、ジョージ6世がその重大スピーチを開始した時、かすかに聴こえていた音楽はスピーチが成功裡に進むにつれて音量を上げていき、最後まで感動的にやり遂げた時、音楽の波となって国王一家や関係者、すべての国民を包むのでした。
 その音楽こそ、ベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章。そして、スピーチを終えた彼がお立ち台に立って、国民の歓呼を受けるときの音楽はピアノ協奏曲第5番『エンペラー』の第2楽章なのでございます。                                   2022年1月19日記