本日、としま区民センター小ホールで開催された本岩孝之さんのリサイタルを拝聴してまいりました。本岩さんは東京学芸大学でバリトンとテノールを専攻されたのち、東京藝術大学でテノールを、同大学院修士課程古楽科でバロック声楽、それもカウンターテナーを専攻されたという異色の声楽家で、何と、4オクターヴに亘る驚異的な音域と幅広いレパートリーを有していらっしゃる方です。わたくしは本岩さんのCDライナーノートを何点か書かせていただいたことがあるご縁で、本日、お邪魔させていただきました。
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 この写真はピアノの向阪由美子さん、本岩孝之さん、友人の作曲家・二宮玲子さんと。本岩さん、お背が高くていらっしゃいます。中学時代はサッカー少年でいらして、合唱団に人が足りないときだけ駆り出されておられたとか。
 バリトン、テノール、カウンターテナーの3種のお声を使い分けたプログラミングは非常に多彩で、歌詞言語も多岐にわたりました。例えば、『オー・ソレ・ミオ』『帰れソレントへ』はイタリア語、『ソウ・イン・ラヴ』『アメイジング・グレイス』は英語、『想いの届く日』はスペイン語、『耳に残るは君の歌声』『あなたの声にわたしの心は開く』はフランス語、『菩提樹』はドイツ語といった具合です。もちろん、『ゴンドラの歌』『出船』『初恋』といった日本の名歌もございました。
 3つの声種の使い分けの妙味もさることながら、1曲1曲iに思いの丈をこめて誠心誠意歌われる歌唱表現と、歌の前に歌詞を読んで解説してくださるトークに誠実なお人柄を感じ、とても気持ちよく、楽しく拝聴させていただくことができました。
 ピアニストは川西宏明さんと向阪由美子さんのお二人。前半の曲目はすべて、川西さんの編曲になるものだそうで、そのしなやかなピアノにも聴き入りました。
 向阪さんのピアノはとても丁寧で、細かくアイコンダクトを取られながら、本岩さんのブレスにぴったりと寄り添われていらっしゃいました。
                                    2022年1月16日記