本夕は渋谷区総合文化センター大和田の伝承ホールで、「わ」の会第7回コンサートを拝聴いたしました。「わ」とは、ワーグナーの「わ」。この会は、ワーグナー作品をコンサート形式で上演して、演奏家、聴衆ともに、ワーグナーへの理解を深めていこうという趣旨のもとに結成されました。 代表は、新国立劇場オペラ音楽チーフの城谷正博さん。同劇場のコレペティトールとして活躍中の木下志寿子さん、ワーグナー研究家で明治学院大学准教授の吉田真さんといった方々を中心に、ワーグナー歌いの歌手の方々が参加されておられます。
わたくしは第3回あたりから毎回拝聴してまいりましたが、今回はこれまでより参加メンバーが増えて、規模、演目、表現の幅が広がりました。新規参加の歌手の方々はメンバーの推薦を受け、代表の城谷さんとご相談の上で役柄を決められたとのこと。すでにワーグナー歌手として世に認識されつつある方々のみならず、これからの日本のオペラ界を背負って立つ、第一線の歌手の方々がこれほどワーグナーに燃えておられる、ということに嬉しい驚きを覚えました。
演奏されたのは『さまよえるオランダ人』第1幕から、ダーラントとオランダ人船長とのやり取りの場面。『ローエングリン』第2幕からオルトルートとテルラムントの悪巧み場面、『マイスタージンガー』第1幕から、ハンス・ザックスの徒弟ダーヴィットが騎士ヴァルターにマイスタージンガー修業の意義と困難さを語る場面、『ラインの黄金』第3幕から、火の神ローゲがアルベリヒを騙して捕らえる場面、そして、『トリスタンとイゾルデ』第1幕から、イゾルデとトリスタンが媚薬の効果で恋に落ちる場面、の全5場でした。
贅沢にも、5作品から名場面を集めたステージで、皆さま、たいへんな熱演でした。もっとも迫力があり、登場人物の心情描写に優れていたのは、『ローエングリン』第2幕、エルザの告発に失敗して恥辱にまみれ怒り狂うテルムント、大沼徹さんと、彼を冷ややかになだめつつ悪知恵を吹き込むオルトルート、池田香織さんの鬼気迫る対話でした。
2021年12月20日
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