本日凸版ホールで、「The Trio ヨーロッパと江戸の融合」を、たいへん面白く拝聴してまいりました。このトリオは、フルートの山形由美さん、中棹三味線の常磐津文字兵衛さん、ピアノの菅野潤さんをメンバーとして2019年に結成されたグループで、同年春にヨーロッパツアーを敢行して、バルセロナ、ザルツブルク、パリなどで大好評を得たとのことです。日本デビューは2020年に予定されていたところ、感染症拡大防止に鑑み延期のやむなきに至り、本日、ようやく、わが国へのお披露目を果たされました。山形さんと文字兵衛さんは藝大の同級生、菅野さんはお二人の共通のお知り合い、というご縁からトリオを組まれたそうです。
前半は、ピアノ独奏によるドビュッシーの《版画》、フルートとピアノによる同《小舟にて》、モーツァルトのフルートとピアノのためのソナタ、加藤昌則《フルートとピアノのためのカプリス~旅する笛》というプログラムで、ここまではまだ、中棹三味線は参加されません。
そして後半、いよいよ、中棹三味線を携えた、常磐津文字兵衛さんがステージにご登場です。
前半は、ピアノ独奏によるドビュッシーの《版画》、フルートとピアノによる同《小舟にて》、モーツァルトのフルートとピアノのためのソナタ、加藤昌則《フルートとピアノのためのカプリス~旅する笛》というプログラムで、ここまではまだ、中棹三味線は参加されません。
そして後半、いよいよ、中棹三味線を携えた、常磐津文字兵衛さんがステージにご登場です。
最初に、常磐津の名曲《関取千両幟》から、取り組みに迷いのあった猪名川関が、悩みが解消されて一気に対戦相手の鉄ガ嶽関をやぶるくだりを朗々と弾き語りされます。次いで、フルートとのデュオで、常磐津《将門》の一部を文字兵衛さんが編曲された《ほのぼのと》を演奏されました。
わたくしは長唄を習っておりましたので、細棹は少し弾きましたが、細棹はその名の通り、音の線が細うございます。ですから、常磐津の中棹の音には格別の憧れがございまして、今日は久々にずしりと響く中棹と絶品の浄瑠璃を堪能させていただき、うっとりいたしました。
次にピアノのデュオで、文字兵衛さんの小品2曲。
最後に3人のお顔合わせで、松波匠太郎さんに委嘱された《トリオ》の日本初演、ウォン・ウィンツァン《Asian sea》の文字兵衛さん編曲版、宮城道雄《春の海》のお三方の合議編曲版が演奏されました。松波さんの作品はフルート、ピアノはもちろんのこと、常磐津音楽と中棹三味線への深い理解を感じさせる佳品でした。ご立派なお仕事に頭が下がります。と思ううち、松波さんの奥様をよく存じ上げていたことに気づき、はっといたしました。ご結婚のころ、松波さんにも紹介していただきましたのに、本日はご挨拶できず、失礼いたしました。
《春の海》は、基本的に、原曲の尺八パートをフルートが担当し、箏の右手を中棹が、左手と右手の一部と装飾音をピアノが分担して、さらにピアノが和声を補強するという形で演奏されました。
アンコールはもちろんトリオで、文字兵衛さん作曲の《ワインのしみ》と滝廉太郎《荒城の月》。
聴かせていただいてまず感じたのは、この編成の既成楽曲がないので、つくるか、委嘱するか、既成楽曲を編曲するしかなく、いずれにしてもたいへんな手間暇がかかるであろう、よくぞそのハードルを乗り越えてここまで漕ぎつけられたものだ、ということでした。
それから、音律の異なる楽器同士の組み合わせですから、厳密に言えば合わないはずですが、それを感じさせない力量をお三方がお持ちであるがゆえにトリオが成り立っているとも思いました。
世界に一つだけのトリオを聴かせていただき、まことにありがとうございました。
2021年12月19日記
わたくしは長唄を習っておりましたので、細棹は少し弾きましたが、細棹はその名の通り、音の線が細うございます。ですから、常磐津の中棹の音には格別の憧れがございまして、今日は久々にずしりと響く中棹と絶品の浄瑠璃を堪能させていただき、うっとりいたしました。
次にピアノのデュオで、文字兵衛さんの小品2曲。
最後に3人のお顔合わせで、松波匠太郎さんに委嘱された《トリオ》の日本初演、ウォン・ウィンツァン《Asian sea》の文字兵衛さん編曲版、宮城道雄《春の海》のお三方の合議編曲版が演奏されました。松波さんの作品はフルート、ピアノはもちろんのこと、常磐津音楽と中棹三味線への深い理解を感じさせる佳品でした。ご立派なお仕事に頭が下がります。と思ううち、松波さんの奥様をよく存じ上げていたことに気づき、はっといたしました。ご結婚のころ、松波さんにも紹介していただきましたのに、本日はご挨拶できず、失礼いたしました。
《春の海》は、基本的に、原曲の尺八パートをフルートが担当し、箏の右手を中棹が、左手と右手の一部と装飾音をピアノが分担して、さらにピアノが和声を補強するという形で演奏されました。
アンコールはもちろんトリオで、文字兵衛さん作曲の《ワインのしみ》と滝廉太郎《荒城の月》。
聴かせていただいてまず感じたのは、この編成の既成楽曲がないので、つくるか、委嘱するか、既成楽曲を編曲するしかなく、いずれにしてもたいへんな手間暇がかかるであろう、よくぞそのハードルを乗り越えてここまで漕ぎつけられたものだ、ということでした。
それから、音律の異なる楽器同士の組み合わせですから、厳密に言えば合わないはずですが、それを感じさせない力量をお三方がお持ちであるがゆえにトリオが成り立っているとも思いました。
世界に一つだけのトリオを聴かせていただき、まことにありがとうございました。
2021年12月19日記
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