本日、12月12日は、新国立劇場『蝶々夫人』の最終日を辛うじて拝見させていただくことができました。12月5日、7日、10日、12日と4公演ありましたうちの最終日でした。タイトルロールは、大躍進中の中村恵理さん、ピンカートンは村上公太さん、スズキは但馬由香さん。シャープレスはアンドレア・ボルキーニさんですが、ゴローは糸賀修平さん、ホンゾは島村武男さん、ヤマドリは吉川健一さん、ケートは佐藤路子さんと、ほぼ、日本人キャストによる上演で、この方々がすべて、ご立派な歌唱と演技で舞台を盛りあげられたことを、まず、たいへん嬉しく思いました。
 この演目は、同劇場の最多演目とのことで、今回は11回目とのこと。一貫して栗山民也演出のプロダクションですから、すでに、古典といえそうです。
 それほどまでに、長く、広く支持されてきたのは、このプロダクションの虚飾を徹底して排した、高雅な象徴性、日本的な美意識に貫かれた格調の高さ、そこはかとなく漂う気品にあると、本日は痛感いたしました。
 中村恵理さんのバタフライは2018年宮崎国際音楽祭での演奏会形式公演で拝聴させていただき、この出ずっぱりの大役を最後までいささかもエネルギーを減じさせることなく歌われた力量に感嘆しておりましたところ、今回は、堂々の本格舞台で聴かせていただき、演技、挙措動作、役への没入度をふくめた総体として、申し分のない蝶々さんであったと、これほどのソプラノが活躍されてされていることを改めて嬉しく思いました。  
 最終場面、蝶々さんの自刃直後、小さなお子さんはお部屋に入ってきて、お母さまの最期を目撃してしまうのですが、一滴の流血もなく、蝶々さんは光に照らされながら後ろへ倒れて、あくまでも上品に、きれいに演出されているのが、この栗山プロダクションの見どころの一つかと存じます。
 幕間にロビーで、いつもサポートしていただいている友人の作曲家、二宮玲子さんにお会いてして話が弾みました。
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 今回の公演プロクラムには、蝶々夫人タイトルロール2,000回の記録を持つ大プリマドンナ、三浦環さんのお話を書かせていただいております。
                                  2021年12月12日記